最近、カルッリの運指について、あるギタリストの人とお話をした。
カルッリの教則本に古典を弾くうえでの右手運指のヒントを得ることができるというテーマでした。
昨年末から今年にかけて、私のテーマはPの安定とその他の指のバランス・・・というものでした。これは生徒さんとのレッスンでもいろいろと言ってきました。
生徒さんによっては、かなりフィゲタ的奏法(pとiの交互弾弦)の練習を与えています。この練習を応用していき、p&m、p&aというふうに、腕の軸を親指側にとるか?、もしくは小指側にとるか?ということを考えながらレッスンしてきました。
現時点の結論としては、腕の自然な動きを考えれば、小指側を軸にしたほうが楽に弾けるのかもしれません。しかし、それだけではPの豊かな響きは得られません。同じようにP側の軸も安定させるのが理想です。つまり、両軸のバランスをとるように、指導しています。
さて、カルッリの教則本の最初のほうは、とにかく4弦、5弦、6弦は徹底的にp(右手親指)の運指がふってあります。アルペジオだろうが、スケールだろうが、低音担当=P・・・なのです。
ここでいうカルッリの教則本は当時出版されていたものです。つまりファクシミリ版ということですね。
全音版「カルリ45のエチュード」にも、もちろんその名残はありますが、注意深く見ないと、この点に気づかないかもしれません。
例えば、1番。1弦〜3弦はim交互、低音は全てP担当。
2番は音階ですが、これも同様の運指です。おそらく、これは現代の教本であれば、全てim交互の運指をふってしまう類のものです。
カルッリの原典の教則本では、この右手のポリシーが徹底されているのです。
類推ですが、カルッリの言いたいことは、Pの安定=その他の指の安定、という図式なのでしょう。
逆にPをしっかりと弾きたい場合は、imaを安定させる・・・弦上に置いておく(プランティングですね)という方法もありということなのでしょう。
ソルの教本、アグアドの教本、またはジュリアーニの教本・・・そのいずれにも右手の安定のためのPの練習は欠かせないらしく、導入部分に書いておかれていることが多いのです。
それを打ち破ったのが、ある意味で「スペイン奏法」、つまりターレガ派と呼ばれる奏法なのかもしれません。im交互で全ての弦を等しく弾く・・・ということを導入段階でやるのは、実はとても難しいことなのです。
このあたりも一概にはいえないのかもしれませんが、市販の多くの教本が、im交互運動に主軸を置きすぎているといわざるを得ません。
長々書きましたが、この点はまだまだ研究段階ですね。