最近、まじめに「レッスン覚書ミニ」つけています。手書きのレッスンノートもつけています。

それをまとめていくこと・・・生徒さんのレッスンにおいて感じていること・・・つまり、「生徒さんに足りない点」に気づくよいきっかけとなりますね。

先日、第35回学生ギターコンクールにて審査員とスタッフをしました。たくさんの出演者の演奏を聴きました。

ここ数年、毎回聴いていますが、やはり自分が生徒を教えているときに感じる共通の「足りない要素」「勉強すべき要素」が多くの参加者に見出されます。

それを箇条書きでまとめておきます。

  1. 自然な拍子のプロポーション(拍子の周期性を含む)
  2. メトリックアクセントのルール(時代による違いや他の音楽的要素により変化するという点も含め)
  3. 旋律線におけるピッチのコントロール
  4. 非和声音の処理の仕方(臨時でつく♯や♭の扱いも含め)
  5. ギター史への知識不足(レパートリーのワンパターン化)


いまのところ、上記5点が私が気になっている「ギタリストに足りないこと」ベスト5です。

私は普段、初心者からプロまで幅広くレッスンしていますが、上記5点は常に意識をして教えています。ちょっと話題はそれるかもしれませんが、上記5点について、教える側の「理解不足」「メソッドが未確立」という問題点も危惧しています。

上記5点に関して、簡単に説明しておきます。

1:2拍子であれ、3拍子であれ、小節内に完全に均等なプロポーションで存在しているわけではありません。これはフィボナッチ数列などに見られる黄金比という概念も理解しなくてはいけませんが、まあ、簡単にいってしまえば、「自然な揺らぎ」のあるリズムの周期を作らねばなりません。

2:上記1とも関連しますが、やはり拍子の周期を理解しなくてはいけないですし、聴衆にはそれを明確に指し示さなければなりません。「1拍目はどすん!と重めに」と単純に述べてしまうことも可能ですが、すべてそのパターンで行けば、冗長さにつながります。そしてそのメトリックアクセントは旋律線の動きや和声、アーティキュレーションなどによって「覆い隠されていきます」。つまり、音楽解釈としてはかなり下位の重要性しか持ちません。しかし、音楽の周期性を支えるという意味においてはベースメントとなっているものですので、絶対に「消滅してはいけません」。このバランスが奏者の個性ともなっていきますし、また時代によっては「一拍目の存在感」が強い場合もあります。その逆の場合もあるのです。

3:これも上記の要素の関連します。音楽を拍のなかに閉じ込めずに先に進めていくもの・・・それが旋律でもあります。そして、ある音が次の音に向かう場合の「音程」(ピッチ)というものがあります。また「動きずらいピッチ」「そこに停滞するイメージのピッチ」というものがあります。ギターはフレットがありますので、多くの人が『そこを押さえてば”正しい音程”がでる』と思っているのでしょうが、旋律の推進力を考えれば正しくないのです。このことはギターの魅力でもあるヴィブラートの技術とも関連してきます。実はこのピッチコントロールの意味を感じずにはヴィブラートは不可能であるともいえます。ここに縦の要素「和声」のことを考慮にいれれば、より複雑にはなっていきます。最終的には「どちらをとるか?」という決断をさまられることになりますね。和音も弾け、旋律も弾ける「完全な独奏楽器」としてのクラシックギターの宿命ともいえる問題です。

4:旋律の動きをつかさどる重要なポイントです。これは今年「あづみ野ギターアカデミー」で講義する内容となっています。音をどのようにつないでいくか?・・・音のグループはどのようにして形成されていくか?・・・フレーズの頂点は?・・・という点を考えていくうえで、欠かすことができない要素です。

5:ギター史について理解すること、一般の音楽史について理解すること・・・これがないためにギターレパートリーが限定されすぎています。確かにたくさんの人に弾かれている曲、弾き継がれている曲は「名曲」といっていいでしょう。しかし、有名なソルにしても、「すべてを弾いてみる!」という意識で取り組んでみれば、「ああ、こんな曲もあったのか!」と思えるもののほうが多いはずです。そのためには、未知の楽曲の楽譜から自力で解釈する方法論が大切となるわけです。上記1〜4はその基本となる考えです。


上記1から5のことは、「音楽表現」に関するものです。特に1から4に関しては「正確にコントロールされた技術」が必須です。

その技術の面においては、現在ほとんどのギタリストが獲得しつつあるといえます。また、その点のメソッドも十分に確立しつつある段階であると私は思っています。

あとは、上記1〜5に関して、教える側、学ぶ側がどのくらい「必要性」を感じているか・・・ということです。教える側に上記1〜5を噛み砕いて、生徒に伝える技術があるか?・・・ということも大切です。


学生ギターコンクールのブログ記事において、私は以下のように書きました。

私のレッスンは理論はありますが、基本的には生徒の「頭で考えさせます」。だから型を押し付けません。

私はレッスン時において、上記1から5を生徒各自が「自分の言葉」で整理して理解することを望んでいます。これが私のレッスンのやり方です。

解釈の結果のみを教えるほうが「速成栽培」としては効率がいいですが、それでは生徒さん本人が「音楽のパワー」を感じることはできませんし、その後もしプロの音楽家となった場合に、演奏活動だけでいければいいのですが、もし教えるという立場になったときに、「音楽の素晴らしさ」を伝えることは不可能となるでしょう。

手間はかかりますが、それが私の教授方針の哲学となっています。

九九を覚えるような人間よりも、数学の難問をとける人間を育てたいと思っています。

(数学とか物理に挫折した人間が言うのもなんですが・・・)



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