以下のような質問をメールにて頂きました。メールをくれた方は現代ギター社「クラシックギター名曲てんこもりブック」を見て勉強しているようです(私が奏法解説を担当しました)。みなさんにも共通する疑問でもあるでしょうから、ここに共有しておきますね。

マリアルイサの消音について御聞きします。2、3、6、9小節の四分休符、5小節の全休符などは消音しないといけないのでしょうか?

回答:2小節目のは消音する。3小節目のはしない。6小節のはしない。9小節目は消音する。5小節目の全休符は消音する(←これは絶対にする!)。

もう少し詳しく説明しておきましょう。問題はサグレラスの記譜の仕方にあります。簡単にいえば、この曲に関して伴奏についてはサグレラスはほとんど「音を弾くタイミングを記譜しているだけ」の場合が多いということですね。

まずはクラシックギター独奏の曲にとりくむときに、「曲が何声で書かれているか(記譜されているか)」を考えなければなりません。このサグレラスの楽曲の場合は「メロディーとその他の声部」というふうに記譜されています。

簡単に言ってしまえばメロディーと伴奏という分け方でしか書いていないということ。つまり実際の低音の音価は四分音符ではない可能性があるということです。

低音の音価(音の長さ)を明確に書き分けることはしなかったわけですね。それは、学習者の読譜のしやすさを考慮してのことかもしれません。もしくは「メロディーと伴奏」という書き分け方さえしておけば、低音の音価を考えなくともメロディーとの兼ね合いで「自然な伴奏の形」をイメージしてくれるであろうと期待したのかもしれませんね。
 

もし、この曲を二重奏に直す場合に、最初はAm、その次はE7というコード伴奏となると思います。ではその伴奏をとるときに低音を伸ばし続けるか、伸ばし続けないかはメロディーとの兼ね合いで決まることになります。
原則として同じ和音ゾーンのときは低音は維持したほうがよいです。例えば、Amの和音の場合、低音のラの和音は鳴り続けていた方がよいということです。


私の場合の処理を書きます(上記の回答は以下の考え方に拠っているということです)。2小節目は、ラシドミラシと冒頭のフレーズがスタートし、それをドで受ける部分です。コードはAmです。ここの低音ラは二拍目まで伸ばし、12フレットのミの音がでると同時に消音します。
そうすることでメロディーの最高音の印象が強く聴き手に伝わります。次の3小節目の低音ミは一小節伸ばします。ここはコードネームで言えばE7なので低音が持続した方がよいと思うからです。4小節目の低音ラも三拍伸ばします。これも同じ和音の場合、特別にメロディーを印象深くしたいのでなければ同じ和声のゾーンではバス(低音)は持続していたほうがよいという理由からです。


また五小節目でラシドミラシが登場します。この時、前の小節で鳴っているラの低音は消音します。「さあ、またこのメロディーが始まったよ!」という部分ですので、曲冒頭部分と同じ雰囲気にしなくてはいけません。つまり「メロディー以外の音は必要ない」ということです。

さて、この第二フレーズ目のあと6小節目の低音の処理は意見が分かれると思います。私の結論からいうと低音は三拍伸ばします。最初のフレーズではメロディーのドのあとにミまで音が「上がります」。冒頭のラから考えればおよそ一オクターブと4度分の音程の上昇があったわけです。しかし、6小節目ではドから徐々にメロディーは下降していくわけです。つまり、ドーシーラと順次下降していきます。言って見ればこのシはドとラの音をつなぐ接着剤的な役割しか果たしていません。なので、この音にアクセントを与える意味はないわけです。なので、ここはAmの低音であるラが持続していたほうがよいというのが私の結論です。

もちろん、Amという和音からみれば、シの音は非和声音ですので、それを印象深く聴き手に聞かせたいという場合は、低音ラを消音しても構いませんが…
 

楽曲が何声で書かれているか、そして、実際に作曲者は何声を意識して曲を書いたのか?…このことを考える事が、クラシックギター学習において実に大切なことです。ソルなどは厳密に声部を書き分けていますので、そのあたりを研究してみると声部で考える重要性がわかってくるかもしれません。

富川勝智

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