空気は人を作ります。そして文化を作ります。

9月19日の夜に日本を出発し、ドイツ、スペインと巡り、9月26日の夕方に帰国。訪れた都市はデッケンドルフ、ミュンヘン、バルセロナというものでした。目的は3つ。
林君のデッケンドルフでのコンサートを聴くこと。
ミュンヘンのオクトーバーフェストに参加すること。
バルセロナを観光してくること。

いずれにしても、各所の空気を感じる旅であったと思います。デッケンドルフとミュンヘンは未見の地でした。ドイツの空気感というのかな?…教会に行ってミサの音楽や合唱を聴いたり、オクトーバーフェストのパレードの音楽を聴いたりしても、空気というものを感じます。

音楽をやっている立場からすると、音の響きが違う&普段聴いている(身体にしみ込んでいる)音楽が違う…と思う訳です。

バルセロナは私が10年ちょっと前に勉強していた場所です。街を歩くと地中海の空気を感じます。そうすると勉強していた当時は素通りしていた「空気」を感じることができます。客観的に感じることができるようになったのでしょうね。

そうすると、勉強していた当時に感じていたもの、勉強していた内容が記憶に呼び起こされるようになります。

空気感というのは人の記憶を呼び覚まします。そして今まで感じたことがない空気感によって新鮮な感覚を持つ事ができます。デッケンドルフ、ミュンヘン、バルセロナ…と共通した空気感というのもあります。

オクトーバーフェストは予定にはいっていたお祭りでしたが、バルセロナではメルセー祭に遭遇することができました。いずれもそれぞれの場所の強い文化の求心力を持っています。お祭りの装飾、音楽、人々の服装、喋り方、動き方…全てがやはり日本とは違うわけです。

ヨーロッパのエネルギー量には圧倒されます。食べ物の量、飲み物の量…すべての物差しが違うかなあ…と。エネルギーの量は音楽にも感じることが出来ます。20代後半をヨーロッパで過ごしましたが、その当時は勢いで吸収しようともがいていたのだと思います。どちらかというと知性で感じ取ろうと思っていたのかもしれません。

もうひとつのキーワードは「重心」かもしれません。人間は立っているだけでも、そして座っているだけでもエネルギーを使います。私がこのことを具体的に意識したのはバルセロナにいた頃でした。師匠であるアレックス・ガロベー氏の勧めでアレクサンダー・テクニークのレッスンを2年間受けました。

立って座る事…これがアレクサンダーテクニークの基本です。というよりはこれ以外は教えないといってもいいほどです。そして、師匠であるアレックスのレッスンを通じて、このニュートラル状態の意味を分かるようになってきました。

日本に戻ってきてから教授の際や演奏の際に応用し、研究を続けてきました。そして身体の動作と音楽表現が強く結びついていることを体験として強く感じられるようになってきました。人間は立っているだけでも、座っているだけでもパワーを使っている。そして、エネルギーを出し続けているのです。

これが今回の旅とどう関連しているか?…教会や建築物をみたときに「あ、これがヨーロッパ的な感覚なのだ!」と再発見したのです。バルセロナの大聖堂を観ても、タピエス美術館の奇抜な装飾、カタルーニャ音楽堂のムンタニェールの意匠…この全てに重力に逆らって屹立しているの「意図」を見るようになります。

その重力に従うこと、逆らうこと、負けること…この全てが音楽表現へとつながってきます。実はこれを感じたのはカタルーニャ音楽堂のカフェでアレックス・ガロベー師匠のポスターを観た時でした。「彼から何を学んだのだろう?」…頭の中で思い出すこと…この作業をしていると「ああ、僕はバルセロナ全部から学んでいたのだ!」という考えに至ったのです。

実はドイツで林君に請われて午前中3時間ほどレッスンをしました。身体のニュートラル状態を知る事の大切さだけを教えたのです。もちろん、今までのレッスンにおいても要所要所で教えてきた考え方なのですが…そうすると音楽の流れが非常にスムーズになってきました。

このことは先日9月15日から17日まで行われた秋吉台でのギター講習会でも生徒さん数人のレッスンで教えたものであったのです。たまたま「頭の中でフレーズを分析できても、指先のコントロールだけでは正確に自分の頭の中の音楽的な流れを形成できない」というタイプの生徒さんが2名ほどいたのです。

身体のニュートラル状態=実はエネルギーを使っている…ということが分かるだけで面白いように音楽のイメージを身体の動きと連動させることが可能になりました。

そして、その数日後に同じ事を林君にもレッスンしてみたわけです。

その後、デッケンドルフ、ミュンヘン、バルセロナと旅してみて、ヨーロッパ的な建物のバランス、そしてそれに抗うこと、意図的に負けてみること…以上3つのパターンを目にするうちに「ヨーロッパ音楽をやる基本はこれだ!」という確信に至りました。

つまり、この旅を通じて私自身は音楽的にもかなり勉強できたわけであり、いままでの知識を再整理することができました。このことについてはまた次回のブログのほうに書きたいと思います。

…以上、若干まとまりはありませんが、今回の旅行記完結です!



 


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