日曜日のワークショップは旋律をテーマにしたいと思っています。講座タイトルは「音楽表現講座 歌うことでわかること 気づくこと」にしました。



歌うこと。クラシックギターの人がもっとも不得意なことかもしれません。

簡単に言ってしまえば、どのような器楽曲でも声部を実際に声に出して歌ってみるということは「音楽表現」を考える際にとても大事な作業です。以下3つのことを考える良いきっかけになります。

1:フレーズと音のグルーピングのしかた
2:音程感の感じ方
3:歌い手による倍音コントロールのちがい

音楽表現面でこのことが実感できたら、それを楽器でどう実現していけるか?ということですね。ここから必要な技術も導き出すことができます。

実際に声に出して歌ってみることで、ああ、このフレーズはここまでだろうな?とか、この音程は歌いにくいなあ!とか、この旋律はもっとしなやかな音色で歌いたいなあ、とか考えることができます。

この場合歌のトレーニングは受けていなくても良いのです。風呂場の鼻歌程度でおっけーです。


さて、ここから歌詞との関連を。もし歌詞がついてるバージョンがあるなら、フレーズのストーリー作りに歌詞はとても参考になります。良い作詞家は曲の旋律を吟味し分析し、その表情に合わせた歌詞を当てはめていきます。歌詞が先の場合は作曲家はその歌詞のイメージに近い旋律を当てはめていくのです。(そこに作詞や作曲の難しさと職人技があるのです)

ギター独奏で有名なマイヤーズのカバティーナがあります。もう数え切れないほどレッスンしてきましたが、レッスン時に「これ、歌詞付きのバージョンあるよー。今ならYouTubeとかで探せばすぐでてくるよー」とミニ情報を授けることがあります。でも、だーれも次のレッスンまでに聴いてこないもんです 苦笑。

歌付きバージョンあるのかー、という程度。それがどれほどまでこの楽曲の表現を考える際にやくに立つのかを考えようともしない。

簡単にわかりやすいようにハ長調でメロディーと歌詞を書き出してみました。
カバティーナ冒頭





He was beautiful,
Beautiful to my eyes.

ここで、皆さんに歌詞とメロディーの対照をとっていただきたいのですが、「びゅてぃほー」が二回繰り返されるとこは同じ旋律になっています。歌詞をつけた人はよく考えています。同じ歌詞、同じ旋律。二回目をどう歌うか?・・・それを考えるべきです。

「ひーわずびゅてぃほー」までは一息で歌うべきです。曲のテンポが自ずと導き出されます。

さて、「ひー」と「わず」どちらに力点を入れるか?「彼は〜だった」と過去のものであることを回想するよう考えてみると、「わず」をしっかりと噛みしめるように歌うと良いのかもしれません。彼は・・・と歌っておいて、もうその彼はいないんだ・・・とわからせる歌い方をしなくてはいけません。

さて、繰り返される「びゅてぃほー」ですが、二回目を強く念押しのように歌うか、儚く歌いかはセンスです。好みの問題とも言えます。何れにせよ、全く同じ音量、同じ噛み締め方で歌うのは芸がない。

「とぅまいあーいず」は、どの単語に力点をおくか。男女の関係からすれば、「私」に力点を置くのが良いのかもしれません。「私には」と「私の目には」も同じ意味合いがあるので、もしかしたら「眼」にはあまり深さを入れなくても良いかもしれません。

以上のように歌詞だけみても、たくさんの旋律の歌わせ方のヒントが出てきます。

そして、もし歌詞がなくても、そういう分析ができなければなりません。歌詞があれば(もしそれがきちんとした作詞家がつけたものならば)よりヒントが多くなるということは言えます。


さてさて…

そういうことをいつも考えながらレッスンしていたりするのです。基本的に僕は歌好きなので、たくさんのことを歌から学ぶことができますし、音楽表現の根本は「歌」にあると思っております。

で、3/3の日曜ワークショップは「旋律」をテーマにします。興味のある方はぜひご参加ください。

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