音楽の理論について、そして技術について説明することはとても難しいです。
そして、それを生徒さんに素直に(拒否反応をおこさずに)実行してもらうことも…なかなか難しい。

たとえば、アポヤンドの練習。みなさんがギターを始めて最初に練習する「im交互」。…いろいろあります。「やらねばならないこと」や「守らねばならないこと」があるわけです。最初はその理由が分かりません。そして、理由がわからないでやっていても、しばらくすると「ああ、こういうわけで、アポヤンドを勉強しておかなきゃいけなかったのね」と合点がいくものです。

とはいっても、あるていど理解力のある年齢がいった生徒さんの場合には、こちらがやってもらい練習や方法に関して、納得して取りかかってもらうほうがモチベーションがあがります。簡単に言えば、損得なのですね、その生徒さんの。つまり、「これができると、こんなにいいことがある!」と思ってもらえれば、スムーズにこちらの言う事をやってくれる。練習してくれる。実行してくれる。

今日、お子さんの生徒に「im交互運動」を教えました。

『なんでiで始めなきゃいけないの?』

このようにと言われましたが、この年齢なら、そうやってもらうしかありません。まだギターを始めたばかりなので、弦を弾こうとすると、条件反射でmの指がでてしまう。なので、「ひとさし指から弾弦をスタートする」ことに慣れていないのです(mからの交互運動ならスムーズにできてしまうのです)。

この子の疑問には、『imの順番で動かす練習だからね〜』という曖昧な返答で済ましました。小学校高学年くらいになれば、imという順番で動かす意味や任意の指を意識して動かすことの大切さを教えることもできますが…。

ある程度理解力のある年齢の生徒さんの場合には、しっかりと説明します。ですが、難しい言葉は避けます。教える立場として以下のことはレッスンの現場で、常に心がけています。

1:小学生高学年程度でも理解できる言葉を用いる。
2:漢語を避ける(例えば、円滑に→なめらかに…というふうに言い換える)。
3:「たとえ」や図(絵)、道具などを用いる。

etc…

他にも気をつけていることは沢山あります。教える仕事をするようになってから、「伝える方法」に関する本を多読し、ある程度ノウハウは身につけてきました。

「たとえ」に関しては、教えて行きながら、ぴたっとはまる表現を模索していくしかありません。また、マスタークラスなどで「おお!そういう説明の仕方があるのか!」というふうに、他の先生が用いている言葉使いや比喩などを教師としての自分に取り込んで行くように努力しています。

ちょうどそんなことを考えていた時、以下のブログ記事と出会いました。ギタリスト小川和隆先生が書かれている「クラシックギターは耳で調弦するべし」ということを説明したブログです。
調弦その1「ヘン?」「いいかも!

小川先生の「たとえ」のうまさ!…お読みいただければ分かるのですが、「柱」「建築物」の喩えは秀逸です。

「柱の長さを微調整していけるようになる」という喩えは、平均律ではない音律などへの橋渡しにもなります。実際にギターの調弦というのは、各プレイヤーによって違うものです。耳で微調整しますから。和声を中心に考える人、旋律を中心に考える人、またその両方。実際の微妙な音程の変化を指の押さえ具合で変化させる人も多いのです(というか、それができなければ本当の音楽はできません!)。

いずれにしても、小川先生の喩えは非常に示唆に富んだものになっていますし、わかりやすいのです。そして、耳で調弦することの大切さを理解することができます。耳で調弦することによる可能性もわかるのです。

耳で調弦できたら、こういう感覚になってくるんだ!…というふうに生徒さんは思う筈です。「耳で調弦しなくちゃダメだよ!」というよりも効果的ですよね!

「たとえ」のうまさ…ギターを教える立場として大切にしていきたいと思います。今回は小川先生に脱帽です(いつも尊敬する先輩なのですが…)。