ギターレッスンと演奏の日記 from 富川ギター教室

クラシックギターの「伝道師」富川勝智のギター教室でのレッスン活動と演奏活動の記録です。

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アリリオ・ディアス他界〜彼の功績(エディション)

2016年7月6日、ギタリストであるアリリオ・ディアスの訃報を受け取りました。92歳まで生きたので、天寿を全うしたといえるでしょう。

92歳でアリリオ・ディアス他界(ベネズエラのネットニュース)

ほんとうに素晴らしい業績を残したギタリストであり、パフォーマーとしても素晴らしい演奏家でした。その実演、録音…すばらしい芸術を我々に残してくれました。

僕はほんとうに彼の大ファンでした。教室には彼の肖像画も飾っています。その音色、グルーヴ、音楽の勢い…憧れでした。
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さて、アリリオ・ディアスという人が残した業績というのは具体的になんだったのだろう?…いまから簡単にまとめてみたいと思います。

  1. アンドレス・セゴビア、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの後継者としてクラシックギターの正当な奏法と美学を継承した
  2. 南米ギター音楽の素晴らしい紹介者であった
  3. バリオス・マンゴレの作品の正当な継承者として、その普及に尽力した
  4. ナポリ民謡集をはじめとして素晴らしい編曲を残した
1について。セゴビアとレヒーノに学び、その両者から素晴らしい技術と美的感覚を継承していると言えます。彼のレパートリーは一見「セゴビア・レパートリー」を中心にしているように見えますが、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやその弟のエドゥエアルドの作品(たとえば、ボレロなど)の録音も多数残しています。このあたりは実に興味深いです。どちらかの流派に属することなく、自由に行き来ができたのは彼の人徳あってこそ…とも言えるかも。

2について。 南米ベネズエラの出身であり、アントニオ・ラウロやソーホなどの素晴らしい紹介者でした。「ラウロ=ベネズエラワルツ」というくらいが、まさのそのオーソリティだったと言えます。実際にラウロの諸作品を弾く場合にはディアスの録音などを参照するべきとも言えます。
このようなベネズエラ音楽のアンソロジーも編曲編纂しております。
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3について。アグスティン・バリオス・マンゴレは現在では「超メジャーな」クラシックギター作曲者ですが、実は1960年代までは「忘れ去られたギター作曲家」でした。その作品はヨーロッパで知るものはほとんどいなかったといえます。バリオスの作品をヨーロッパの持ち込んだ最初のギタリストのひとりがディアスであったといえます。ディアスはヨーロッパ最初の留学先をマドリッドと決め、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの門下となります。

そこで同時期に学んでいたのが若き日のホセ・ルイス・ゴンサレスでした(我が師匠です!)。実はホセ・ルイス先生も素晴らしい「バリオス作品の演奏者」でした。郷愁のショーロやパラグアイ舞曲、フリア・フロリダ…名演奏でしたが、これらのほとんどを若き日にディアスの演奏から知ったといいます。ディアスが弾いているのを見て、覚えていったと話していました。

その後、1980年代以降に、ジョン・ウィリアムズが積極的にバリオス作品を取り上げたのでバリオスは世界的に有名になりますが、最初のヨーロッパへの紹介者はディアスだったといえます。結局はアリリオ・ディアスの南米音楽のセンスがなかったら、あのジョンですらバリオスの名演奏は不可能であったといえるでしょう。

そして何よりもバリオスの弟子であるラウル・ボルヘスにディアスはギターを現地で習っています。つまりバリオスの孫弟子にあたるのです。ディアス校訂のバリオスの楽譜がでていますが、その意味でも資料的に信憑性のあるエディションとなっております。ディアス本人も優れた演奏者ですので、ほんとうに「実用版」と言えるエディションであると言えるのです。

現在、ディアス編のバリオスの楽譜は一冊にまとまって出版されています。大変お買い得!(ピースでじみちーにコレクションしてコンプリートした瞬間に、一冊にまとまってでてしまいました)
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4について。イタリアにも長く住んだディアスでしたが、ナポリ地方の民謡を独自に採取しギター編曲したものもほんとうに素晴らしい仕事といえます。その録音を聴くと「超絶技巧と音楽性の絶妙なバランス」が感じられます。僕個人のなかで、ディアスのナポリ民謡集の録音とその編曲は「クラシックギター音楽における民謡アレンジの金字塔」ともいえます。
これも昔はピースででていたものが、今は合本で買えます!
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このナポリ民謡のアレンジは数曲僕も実演したことがありますが、はっきりいうと超難曲…です。ディアス本人の録音がないとニュアンスが掴みにくい部分も多いのですが、是非今後たくさんの方にチャレンジしてほしい名編曲ではあります。

さて、いろいろとディアスの業績をまとめてきました。主に楽譜出版(エディション)に関するものを紹介してきました。彼が亡きあとも「素晴らしい仕事」が残っていくことが僕の願いです。

じみちーにディアス先生のエディションはバリオスにしても、ナポリ民謡集にしても研究しているのですが、たくさんの示唆とアイデアを与えてくれます。巨匠のこういう業績が失われないように…願うばかりです。



 


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「版」の意味〜セゴビア編ソル20のエチュード再版!

アンドレス・セゴビアが運指を付け、音楽的な解釈(アゴーギグ)などを与えた「セゴビア編ソル20のエチュード」がやっと再版されました!

クラシックギターを学ぶ人にとって、アンドレス・セゴビアの運指&解釈を学ぶことが大切です。そのことに関して、以前ブログ記事を書きました。

ソル20のエチュード〜セゴビアの意図を探る

この記事を読んだ生徒さんの中に、「自分もこのエチュードをやってみたい!」という方が多くいました。ですが、この記事を書いた時点(2014年3月)で、なんと絶版…。ネットオークションなどではプレミアがついていたり…嗚呼…。

その後、クラシックギター専門店などに問い合わせても、在庫なし…という状態でした。

ところが、このたび、やっと再版!うれしいニュースです。




版について簡単に触れておきます。この版は「アンドレス・セゴビアは運指を付し、解釈をほどこした」という点で意味があります。つまり、セゴビアという巨匠の考えを学ぶという点で価値があります。

アマチュアのギタリストの人が陥りがちな考えは以下です。
1:セゴビア版が絶対に正しい版である。
2:ソルの原典版のみが正しい版である。

1も2も正しくありません。セゴビアの考えを学びたいのであれば、1を。ソルの考えを学びたいなら、2をセレクトすれば良いだけです。

ソルのエチュードには他にも重要な学ぶべき版がたくさんあります。例えば、イエペス編、レヒーノ編…それぞれに違いがあります。個性があります。その個性(各編者の音楽的な意図)を学ぶ事が、「版」を学ぶことです。

同様に「カルカッシ25のエチュード」を学ぶ場合には、カルカッシの意図を学ぶ場合には原典版をセレクトしてください。

最近、現代ギター社から出版されたものは原典版に近いです。



ただし、注意すべき点は、カルカッシ25のエチュードの「教育的意図」を提案したのは、ミゲル・リョベートであるということです。リョベートによる運指によって、このカルカッシ25のエチュードは「近現代ギターテクニックを学ぶための最良のテキスト」になったと言えます。

なので、全音から出版されている版は、その運指のほとんどにおいて「ミゲル・リョベートの運指」を採用しています。なので、この版も是非学ぶべきであると私は考えています。


 

もちろん、現代ギター社版には「原典版」としての良点がたくさんあります。右手左手のフィンガリングも原典は極めて少ないですので、自分で優れた運指を探っていくという使い方ができます。また現代ギター社版には、佐藤弘和氏による優れた解説が載っていますので、音楽的な理解を育む上で最高のテキストになります。

…私個人としては、まずは全音版(つまり、リョベート版)でスタートして、その後、しばらく間を置いてから、原典版(現代ギター社版)で学び直すのが良いのかなあ…と。

いずれにしても、今回、セゴビア編20のエチュードが再版されたことはうれしいことです。きちんとセゴビアの巨匠のワザを学ぶ教材が残って行くべきだと思いますし、その機会は失われてはなりません。

そして、版(編)について、きちんと皆さん学んでほしいと思います。それにはギター史の正しい知識が必要となってきます。余談にはなりますが、7月から(公社)日本ギター連盟主催の「ギター史&和声学ワークショップ」がスタートします。興味が有る方は是非、参加してください。今回で4年目となりますが、今回はより実践的な知識を提供したいと考えています。版や楽譜について…十分な情報を提供したいと考えています。



 
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