今年にはいってから、毎月1回日曜日にクラシックギターに関する様々なレクチャーを行なっています。2ヶ月に一度は外部から講師を招いて行なっています。

そして、2ヶ月に1回は私がギターテクニックの基礎講座を行なっているわけです。これは自分の中にあるギターテクニックの理論をまとめていく作業でもあります。

すこしずつ教室外の方も参加してくれています。すばらしいことです。「正しいこと」「良い知識」は皆で共有していかなくてはいけません。基礎テクニックに関しては、様々なアプローチの仕方がありますが、私の経験からいうと、やはり良い音楽家の使っているテクニックに対する哲学は共通する部分が多くあります。

「あのギタリストだけが知っている秘伝」というものは存在しません。

ただし、それが体系化されているか、理論化されているか?…という違いのようのものはあると思います。

ただし、私はこの基礎講座を行なうにあたって、一切テキストなどはまとめていません。ある意味、いきあたりばったり…でやっています。なので、右手だけで3回やりましたが、毎回内容は変化しています。どこから切り込んでいくか?…そして、そのときの私自身の興味のあるポイントによってアプローチが変化していきます。

そして、受講生からの質問などによっても、そのアプローチを変化させます。

7月の講義内容を参加者の方がまとめてくれたもの(ブログに)があります。執筆者の許可がおりましたので、転載します。

良くまとまっています。どうぞ、お読み下さい。

 

今回の講座の目的は、要は、長時間練習しても、手を痛めない左手の使い方の追求です。具体敵には、無駄な力をどう排除するのか、師匠から細かくご説明がありました。

各ポジションのフォーム:

  1.  同じ弦での各ポジションの手のフォームをチェックする。手首と腕に無駄な力が入っているかどうか。1ポジションと7ポジションのフォームの違いを認識。特にローポジションのフォームに注意する必要がある。
  2.  手の「箱」を常に作ること。同じポジションで、1弦と6弦の手のフォームは、かなり違う事の認識。
  3.  親指は、ネックに固定する必要はありません。手を1弦から6弦に移動する時の親指の位置をチェックする事。

弦の押さえ方:

  1. 手のフォームや、手の箱に常に意識する。手を弦から離す時、フォームは保ったまま離す。そうすると、次の場所に手を下ろす時、フォームを作り直す必要がありません。
  2. 指は、どういう理想な動きで弦を押さえるべきか。練習として、まず指を弦に置く。最小限の力で弦を押さえる。音を鳴らしたら、弦から指をそっと離す。常に手のフォームが崩れないように注意する。
  3. 弦を押さえる時、場合によっては、重力や、腕、または手の微妙の動きで、弦を押さえる事もあります。
  4. 指の動きを最小限にする事によって、左手から無駄な力を排除できます。さらに、、左手のコンパクトな動きのおかげで、右手で初めて早いパッセージを弾く事が可能です。

セーハのかけ方:

  1.  全部の弦から音が出るように、1指を必死に押さえる必要はありません。ギターの音楽のなかで、唯一こういうテクニックを要求されるのは、ヒナステラのソナタぐらいです。
  2. セーハをかける前に、「何弦までかけるのか」、「どの音を鳴らすのか」を確認する。これがわかれば、セーハは、かなり楽に出来ます。
  3. セーハは本当に必要かどうか。譜面にセーハが書いてあっても、必ずしも必要ではない事がしばしばあります。
  4. セーハをかける時、ほかの指を1指に寄らないように注意する。
  5. セーハは、親指を使って指板を強く握る事によってかけるのではなく、腕の重さ(重力)を借りるのが理想。
  6. セーハの押さえ方は、上記の「弦の押さえ方」の(3)で参考する事があります。

講座全体についての感想:

無駄の力が入っていない左手の弾き方をいかにできるか、いろいろ教えていただきました。一月の講座とセットで考えると、実にすばらしい講座となりました。

師匠がスペイン留学の時、一日6〜8時間も練習していた事で、どうやって手を痛めないか、いろいろ研究したそうです。自分も日頃どうやって手を痛めないのか、いろいろ考えたり、心配していたりするので、こういう講座を特に歓迎し、言われた事をすっと吸収できます。

世の中、生徒が弾きたい曲だけを習わせておいて、弾き方の基本について、何も伝授されない教室がたくさんあるため、そういうレッスンを長年続けてきた40代、50代のアマチュア・ギタリスト達は、手を壊した人が非常に多いそうです。

今日のレッスンで特に感動したのは、師匠に言われた事を、あまり問題なく実現できた事です。たとえば、ポジション別のフォームは、この前のレッスンで言われたばかりで、その後、家でも練習していたので、今日は、かなり楽にできたのです。

ギターは、これから益々面白くなっていきそうです。

…簡潔にまとまっています。おそらく、この参加者の方の「意識の向き方」が反映されているレジュメとなっていると思います。

これが面白いです。参加者の方全員がこのような要約を各自作ってくれたら…実に私にとっても知識の整理に役立ちます。皆さま、是非作ってください!!。そうしたら、おそらく全部違うものができあがるはずです。

 

それでも、このレジュメを読んでみて、気づいたことがあります。

「なんだかんだ全部、私が習った先生達から教えてもらったことじゃないか!!」…ということ。

直接、間接…上にあることは、ぜーんぶ、先人から受け継いだものなのです。つまり「秘伝」などどこにもないのです!!

それは世阿弥の「花伝書」に書かれていることが、実は秘伝でもなんでもなく「あたりまえ」のことしかなかった…ということに似ています。世阿弥の意図は(おそらく)、“秘伝”という体裁をとって、「当たり前のこと」の大切さ、基本の大切さを後世に伝えようとしたことだと思います。

私はギターのテクニックというのは、そういうことであると思っています。「結局、みんな同じこと言っているじゃないか…」ということになるのでしょうね、最終的には。

しかし、基本というのは非常に柔軟なものであることは事実です。ですので、上にあるレジュメの『親指は、ネックに固定する必要はありません。手を1弦から6弦に移動する時の親指の位置をチェックする事。』という部分は、ごく一部の人にとっては「許されがたい」行為と思われるかもしれません。私も教則本に書くとしたら、この一文は採用しないと思います。

ただし、腕の軸を意識しようとしたときには、上記のアプローチの重要さに気づくはずです。腕の延長線上に指がある、と仮定したさいに、「ネックの真ん中に左手親指は置いておこう」という教則本的な“ルール”は邪魔になるのです。

このことに関しては、前日行なわれた「あづみ野ギターアカデミー」のギターテクニックの基礎見直し講座(担当:池田慎司)において、ちょこっと指摘しました(覚えている人はいるかな?)。

そして、左手に関しては、池田君のレクチャーからいっぱいネタをもらいました。「ああ、そういうアプローチもあったかあ!!」って。

おそらく、次回私の担当する9月の「月イチ」講座では、そのあたりからアプローチするかもしれません。

これを「盗作」「パクリ」と言われないのが、基本の「ふところのふかさ」です。そして実際にディープな世界であることに違いはなく、文書にすることが難しい分野であることは“武道”などの世界と近似しているのかもしれませんね。

 

 

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