ギターレッスンと演奏の日記 from 富川ギター教室

クラシックギターの「伝道師」富川勝智のギター教室でのレッスン活動と演奏活動の記録です。

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三年かけて、テクニックノートをひと通り見終えました

ホセ・ルイス・ゴンサレス『ギターテクニックノート』講座、第34回の動画を公開しました。




今回は第10章「ハイポジション」です。

12フレットより上、つまりボディ上に伸びた指板部分で演奏するときに、左手や身体をどのように使うのかを解説しました。


ハイポジションというと、ただ「高い音を弾く場所」と思われがちですが、実際にはかなり奥が深いです。指だけで頑張ろうとすると、親指が固まり、手首が折れ、指が寝てしまう。つまり、気合いだけではどうにもならない場所。

大切なのは、視線を先に送り、腕を入れ、親指の接点を整え、身体全体の配置を少し組み替えること。今回も、D.アグアドとA.カルレバーロの考え方に触れながら、ハイポジションでの親指の扱いや運指の考え方について整理しました。

そして今回の第34回で、『ギターテクニックノート』に書かれている内容は、ひと通りすべて見たことになります。


三年ほど連載を続けながら、毎回テクニックノートと向き合ってきましたが、正直な感想としては「やはりテクニックノートってすげえなあ」です。

すべてが親切に説明されている本ではありません。むしろ、かなり無口です。こちらがちゃんと考えないと、何も教えてくれないタイプの本。でも、その無口さがあるからこそ、余地がある。

ただ楽譜をなぞるだけではなく「これは何を練習させようとしているのか」「実際の演奏ではどう働くのか」「自分の身体感覚とどう結びつくのか」を考えざるを得ない。その余白があったから、これまで僕自身がギター奏法について考えてきたことや、連載の中で新しく発見したことを盛り込むことができました。

特に大きかったのは、今まで漠然と持っていた身体知を言葉にできたこと。

指の置き方、腕の入り方、親指の接点、視線の使い方、ポジション移動の準備、音を出す前の身体の配置。普段のレッスンや演奏の中では、なんとなく感覚として扱っていたものを、テクニックノートを手がかりにしながら言語化していくことができました。

これは個人的に、とても大きな収穫でした。


そして、この連載を終えたあとも、こうした作業は続けていきたいと思っています。

ギター専門誌の連載という枠の中では、どうしても書けること、書くべきこと、分量やテーマの制約があります。あと一般読者の質や要望を考えると突拍子もないアイデアは書けない。僕が実践し、生徒さんにも効果があった方法論しか書けないわけです。

その制約があったからこそ整理できたこともある。でも一方で、もう少し個人的な身体感覚や演奏の現場で感じていることを、もっと自由に言葉にしていきたいという気持ちもある。

ですので、テクニックノート講座としては残り2回でまとめと総括に入りますが、その先でもギターの基礎技術や身体感覚について、もう少し自由な形で発信を続けていけたらと考えています。

講座はこれで終わりではありません。残り2回では、これまで扱ってきた内容をつなぎ直し、テクニックノート全体のまとめと総括に入っていきます。

34回かけて見てきた内容を、実際の練習や演奏にどう生かしていくのか。ここから改めて整理していきたいと思います。

19世紀ギターと仲良くなるために!

最近、YouTubeのショート動画とインスタの方に、19世紀のギター小品を少しずつアップしています。
youtubeのショート動画はこちら↓




使っているのは、19世紀フランス、ミルクール地方で作られたギターです。
ボディの中には “Coffe” の焼印。ラベルには1834年と1839年のパリ商工業博覧会での受賞歴についての記載あり。1857年頃の楽器。

ミルクールという町は、フランスの弦楽器製作でとても重要な場所です。ヴァイオリン製作の町として有名ですが、19世紀にはギターも作られていました。で、この楽器が面白い。

現代のクラシックギターとは、鳴り方がかなり違う。胴は小ぶりで、音の立ち上がりが速い。響きも軽やか。いわゆる「大きな音でドーン」と鳴る楽器ではありません。

むしろ、こちらが力で押し切ろうとすると、楽器がちょっと嫌がる。こちらがグッと押すと、音が詰まる。でも、指先が弦にスッと入ったときには、音がパッと立つ。


この反応が、とても面白いんです。


19世紀ギターは、アーティキュレーションにものすごく敏感です。音をただ並べるだけではなく、ひとつひとつの音に「子音」がある感じがします。


同じ音でも、右手の角度や力の抜き方、爪の当たり方が少し変わるだけで、発音の表情が変わります。だから、現代ギターよりも「滑舌」がはっきり出る。ごまかしがきかない。音色よりも滑舌。

そんな楽器のレスポンスを短い小品を弾きながら少しずつ探っているわけです。

なのでこのショート動画は、単なる「演奏動画」というよりも、僕にとってはこの楽器と仲良くなるための記録なのです。

19世紀のギター音楽には、短くて良い曲がたくさんあります。ソル、モリーノ、カルカッシ、コスト。

中には今ではあまり知られていない作曲家たちもいる。

その時代の空気や、ギターという楽器の性格がふっと見えてくるような小品がたくさんあるんです。

現代ギターで弾くと、ちょっと軽すぎるかな?と思うような曲でも、19世紀ギターで弾くと「あ、こういうことだったのか」と思うことがあったりね。

「語る感じ」が、19世紀ギターにはあります。

(まあ、もちろんね、19世紀ギターで弾かなくても、良い小品ばかりなので、みなさん弾いてみたらいいよー!)


そして実は、このシリーズにはもうひとつ目的があります。

9月に、19世紀の「フルートとギター」の音楽をテーマにしたコンサートを予定しています。そのための仕込みでもあるんです。

フルートとギターの音楽では、ギターは伴奏と思われがちですが、実はそれだけではありません。低音を作り、和音を作り、リズムを作り、音楽全体の空気を支える。

そのためには、まずこの19世紀ギターがどう鳴るのかを、こちらがちゃんと知っておく必要があります。

実際にフルートの音とどう混ざるかは、リハーサルをしてみないとわかりません。
ただ、その前にギター単体で、音の立ち上がり、響きの残り方、タッチへの反応を確かめておきたいのです。つまり、楽器の「ウォーミングアップ」。

19世紀ギターは、発音が速く、アーティキュレーションにとても敏感です。音を明確に出すのか、少し柔らかく置くのか、次の音へ自然につなげるのか。そのわずかな違いで、音楽の表情がかなり変わります。

輪郭を出しすぎると硬くなる。でも曖昧にしすぎると、音楽の言葉がぼやける。

そのちょうどよい滑舌感を、今はソロの小品を弾きながら探っているというわけ。

古い楽器を弾くというのは、ただ昔の音を再現することではないと思っています。その楽器が鳴らされていた時代と「歴史」に、こちらが耳と身体を合わせていくこと。


現代ギターでは少し説明的になってしまう表情が、この楽器だと自然に出てくることがあります。逆に、モダンのギターの感覚ではうまくいかないこともある。

9月のコンサートに向けて、まだまだ仕込みの段階です。でも、この仕込みの時間がかなり楽しい。

19世紀ギター音楽を、資料として眺めるのではなく、実際に鳴る音楽として感じていく。そして、その響きと滑舌感を、フルートとの室内楽につなげていこうと。


そんな感じで、しばらくこの19世紀ギターによる小品動画をアップしていこうと思っています。

動画はインスタの方にもあげてます。


佐藤弘和《風が運んだ4つの歌》譜読み動画、全曲アップしました

YouTubeで公開している「プロの譜読み First Take」シリーズ、佐藤弘和さんの《風が運んだ4つの歌》の譜読み動画が、ひとまず全曲分揃っております。

あくまでもファーストテイク。今はもっと深掘りしているところです。

今回取り上げたのは、佐藤弘和さんのギターデュオ作品《風が運んだ4つの歌》。

このシリーズでは、完成された演奏をお届けするというよりも、僕自身が楽譜を読みながら、音楽の形を探っていく過程をそのまま記録しちゃってます。

つまり、「演奏動画」というよりは、譜読みの現場を見てもらう動画です。楽譜を前にしたとき、まず何を見るのか…そのあたりを記録に残したかった。


ただし不思議なことに最初に譜面を読んだ時の直感は、弾き込んでいった後も残るものです。

今回の《風が運んだ4つの歌》は、曲ごとに譜読みのポイントがかなり違いました。

たとえば、デュオ作品ならではの難しさとして、自分のパートだけを見ていても和声の全体像が見えてこない場面があります。相手のパートと重なって、初めて響きの色がわかる。そのために僕の秘密兵器「ICレコーダー」も登場します。

また、第3曲「花の香にのせて」では、後半まで読んでいくことで、作品の中に何度も現れるモチーフや、よく使われる音程が見えてきました。最初は何気なく見えていた音の動きが、曲全体を見渡すと、実は作品の雰囲気を作る大切な要素だったりするものです。

第4曲「熱風の中で」では、リズムの捉え方が大きなテーマになりました。前半ではリズムをどう感じるか。後半では複合したリズムをどう整理するか。単に拍を数えるだけではなく、そのリズムがどんな推進力を生み出しているのかを探流。

佐藤弘和さんという作曲家の語法にも意識して、「ファーストテイク」しました。これはやはり最初に見た時の「直感」を大切にしないと見えてこない。でも、この直感は佐藤弘和さんの作品をたくさん弾いてみないとわからないものです。

この譜読み動画は、完成された模範演奏ではありません。

むしろ、迷ったり、確認したり、考え直したりしている部分も含めて見てもらう動画です。そして、僕の直感を探すのも面白いかもしれません。

クラシックギターを学んでいる方にとっては、「プロは譜読みのときに、こういうところを見ているのか」
「最初から完璧に弾くのではなく、こうやって音楽を探していくのか」という視点で見てもらえるとためになるかも。

譜読み(特にファーストテイクでは)とは音楽の手がかりを探す作業です。音を拾っていくことだけが大切じゃない。



今回のシリーズが、ギターを弾く方、佐藤弘和さんの作品に興味のある方、そして譜読みの考え方を深めたい方にとって、何かのヒントになるいいなあ。

なお、2026年7月15日(火)に開催する「富川勝智 Birthday Concert」では、この《風が運んだ4つの歌》を演奏予定です。

譜読みの段階で見えてきたものが、実際のステージでどのような音楽になっていくのか。

そのあたりも楽しみにしていただければと思います。

コンサート詳細はこちら
https://tomikawaguitar.sakura.ne.jp/wp/2026/06/01/%e5%af%8c%e5%b7%9d%e5%8b%9d%e6%99%ba-birthday-concert-%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%ae%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b/










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