クラシックギター弾きにとって爪は一生の課題なのでしょうね。
プロギタリストですら、「いやあ、最近爪の形を変えたんだよ」という台詞をよくいいますね。私もその1人。
もうこのブログをつけて数年になりますが、年末に「その年の概観」というのを記事にします。で、おおまかに読み直しました。「今年は爪の形を変えた」とか「今年はタッチを変えた」とか…毎年同じ内容のことを爪やタッチに関して書いているのです。
共演したギタリストからの影響や、音楽の好みもあると思います。音色の好みが変われば、タッチなども変わりますから。爪の形状も。
とはいっても、基本的な理論はあるので、生徒とのレッスンにおいては以下の方針で指導します。
- 右手の自然な動きを妨げない爪の形状を見つける
- 和音を弾くフォームを原則として利用し、爪の形を作っていく
- 最初の数ヶ月は爪の形と指の動きを毎回のレッスンでチェックし続ける
- 楽曲をこなしていくうちに「爪の形状」は変化していくものである、ということを生徒さんに理解させる。
1は一番重要です。独学でやっている方の多くが、『とりあえず爪を適当に伸ばす』とか市販の教本の爪の形をまねています。その爪の形に合わせた右指の動かし方になっていて、引っ張り弾きやなでるような弾き方になっていることがほとんどなのです。
つまり「爪の形が指の動きを決めてしまう」という悪いパターンになってしまっていることがほとんど。
理想は「指の自然な動きを妨げない爪の形状を考える」ということです。そして、そのことを考えるためには「指の自然な動きって何?」というふうに考えをめぐらすことが大切です。(※私の理論では『物を握る動作』が基本です)
上記のことを踏まえて、爪の形状作りは和音を弾く事を基本に行います。これが2ですね。
そして、これらのことをとにかく最低でも数ヶ月は生徒さんとのレッスンにおいてチェックを続けます。アルペジオや音階などを用いながら、常に1と2を念頭においてチェックを続けるわけです。
とはいっても、初心者の生徒さんにそればかりやらせていても面白くないと思いますので、親しみやすいメロディーや「クラシックギターらしい」エチュードなど曲を与えながらレッスンを進めるわけです。飽きさせず…こっそりと基本はチェックし続ける…このあたりは教えるテクニックの見せ所です。
そして、実はこのチェックはどのような上級者になっても続きます。
左手を直すためにネックのアングルを変えれば、右手の弦に対するアングルも変化します。また生徒さんの音色の好みが変化すれば右手のタッチも変化します。また高速スケールを弾くためには「体の認識」を変えなければいけないかもしれません。
…さまざまな楽曲をこなしながら、右手のタッチはそのつど見直していくしかありません。そのことを生徒さんも理解して、じっくりとコシを据えてレッスンを続けてもらうことが大切なのですね。
それが4です。
初心者であろうが、かなりの経験者であろうが、常に基本に戻りタッチや爪の形状を見直すことが実に大切。
「貪欲に、でも焦らずに…ときどき楽観的に…」というぐらいの気持ちで、生徒さんにはレッスンを続けていただきたいと思います。
そして、最終的には自分の体のことは自分で研究して、“理解”してもらうしかありません。「自然な動き」は本人にしか分からないのです。そして、音色の最終的な好みも、本人次第なのです。
その意味からいうと、爪の形も本人が決めてもらうしかありません。それに対する様々なアドバイスを、私は教師として与えるだけしかできないわけです。
生徒さんとのレッスンで私がよく言う“決まり文句”があります。
『絶対に僕の爪の形は真似しないでね!』です。(※習っている生徒さんは皆聞いている台詞ですね!)
この台詞の意味を是非、生徒の皆さんは考えてみてくださいね。
(余談)→なので、先日の教本付属DVDの撮影のとき、『爪の形』というのを撮られるのが一番嫌でした。見る機会がある方はあくまでも“参考程度”にしてくださいね。
そういえば、ステファノ・グロンドーナも『絶対に爪の形を撮影されるのは嫌!』といっていたなあ。かなり不思議な形でした。彼の理論を聞くと、とても理解できる形なのだけど…。