27日土曜日で今年のレッスンはおしまいです。
ということで、2008年概観、教授活動編です。
今回は教授活動について。主に下記の場所でレッスンしております。
- 渋谷のスタジオ(富川ギター教室の本拠地!)
- (月曜日)横浜の青葉台
- (金曜日)池袋要町の現代ギター社
なによりも、今年からは渋谷のほうを中心にレッスンする体制にしたので、体が楽です。おかげで演奏会のリハとかのスケジュールがたてやすくなりました。
現在、渋谷のほうでは、火曜、木曜、土曜でレッスンしています。
日曜と水曜はフリーにしてあります。こうでもしないと自分の練習やリハーサルなどなかなか調整がつき辛いのです。帰国した当時は、まったく定休日なし!…でやっていました。そして土曜日と日曜日は2箇所の教室をまわっていましたから…。若さがありましたね。
そういう意味で考えると、今年は自分の年齢や今後のキャリアを考えての「整理の年」だったかもしれません。月曜日と金曜日の外部でのレッスンも良いアクセントとなっています。
このあたりのキャリアデザインというものに、非常に意識的になったのは昨年頃でしょうか?それまでは、「来た仕事は全部やる!」というくらいの気持ちで頑張ってものでしたが、自分の生活や音楽家としての目指す目標などをしっかりと考えて、「仕事とは何か?」ということをかなり自問しました。
そういう意味で、今年数回行なった「ギター教師養成講座」は音楽家としての職業意識を再認識させてくれる場となりました。この講座を準備するのには2年程度かかりました。準備していると、まだまだ勉強が足りないことがわかりました。具体的な教授テクニックということではなく、音楽家と社会とのかかわりはどうあるべきか?…というところから始まって、いかにして音楽家が生きるべきかという根本の問題を考えるという良い機会になったのです。
そこから、仕事ということに関して(まるで就職活動中の学生のように)考える作業が始まりました。多くの先輩音楽家にも意見を頂きましたし、今まで共演した演奏家の方のライフスタイルなども参考にさせていただきました。そして多くの本を古今東西、読み直しました。
講座自体には、多くの参加者が集まりましたが、そこで交わされた議論は私にとっての良いフィードバックとなっています。来年も不定期ですが、開講していく予定です。年齢問わず、参加していただけると嬉しいです。
さて、通常のレッスンに関してですが、私のポリシーは『当たり前のことを当たり前にできるようにする』です。このポリシーを貫き通した一年だったかもしれません。
音楽表現においても、演奏技術においても、「プロもアマも存在しません」。音楽をあるべき姿にするための、必要な技術、考え方、哲学は一緒である…と考えています。アマチュアだから…といって、和声の知識や読譜が弱くて当たり前!といっては駄目ですし、技術練習をしなくてもいい…家での練習はしなくてもいい…という考えではない、ということです。
音楽という同じ山を登り、同じ頂上を見据えている以上、プロも(教師も)アマも(生徒も)同じことを学ばなければなりません。そして技術や知識をどのように学んでいくか?(教えていくか?)ということをレッスンの場で提供することが大切であると考えた一年でした。
私自身、技術上においても、表現においても習得するのにかなり苦労しました。奏法改革も数度…(苦笑)。
今はいい意味で(うぬぼれではなく)、『ああ、20年前の自分が、今の自分に習っていたらなあ…』と思えるくらいにはなりました。
ちょっとしたコツで良い音を出してくれる生徒、あっという間にトレモロができてしまう生徒さんなどを見ていると、こういうふうに思ってしまうんですね。
ということで、レッスンにおいては、だいぶ教える自信がついてきた一年ではありました。
そして、生徒さんから実に多くのことを今年も学ぶことができました。生徒さんが疑問に思っていること、うまく出来ない部分、そして理解が難しいと思われる部分…これらをともに考えていく作業によって、自分の奏法にもフィードバックしていくことができます。
レパートリー面でも私のところにくる生徒さんとのレッスンで、多くのことを学べます。ソルやポンセ、ヴィラ=ロボスなどといったスタンダードであっても、生徒さんとのレッスンではより冷静に客観的に分析することができます。
バークリーやベネットなどといった現代曲であれば、なおさらその傾向は強くなりますね。こういう楽曲は実に教えていて面白いです。
全体的に初心者〜プロ志望までまんべんなくいますので、レッスンに飽きがくることはありません。これは私のポリシーなのですが、音楽について大切なことは初心者でもプロ志望でも変わりません。音楽表現に関して、たとえギターを始めて数ヶ月の人でも、たったひとことのヒントで本当の音楽を奏でる人もいます。その逆に、数年習っていても、音楽の本質を理解しようとする態度に欠けている人は上達しません。というよりも、音楽として成立していないのですね。
技術上においても、私はどの生徒さんにも最初に右手、左手の「もっとも重要な理論」を説明します。そして「これは絶対に忘れないでね!」と念押ししたとしても、それをすっかり忘れてしまうのが人間の常です。これを繰り返し、繰り返し教えるのが教師というものなのです。しかし、それでも、人間としての素直さが欠けているのか、数年間に渡って、同じことを言い続けていても定着しない生徒さんもいることも事実です。
音楽表現においても、技術においても、何かを習う際には「素直に」なることが一番の早道です。こちらのいうことに疑問を抱くのではなく、まずは試してみること。もし、それが間違いであると思ったら将来的に捨てればいいだけです。こちらとしては生徒さんの課題解決のために多くの知恵を使っていますし、普段の研究にも時間を割いています。そして何よりも、私の場合、今まで200人以上は教えていますので(体験レッスンを含めればもっとかな?)、ケーススタディの蓄積があります。
習っている生徒さんには、とりあえずこちらに身を預けてほしいというのが教師としての願いです。
ちょっと辛口になりましたが、逆に言うと、『素直に習っている生徒さんは伸びるなあ!』と本当に思った一年でもありました。ある意味愚直にこちらが言っていることを実現しようと努力した生徒さんは演奏が見違えるように変化します。
先にも述べましたが、私は音楽表現についても技術についてもベースメントしか教えません。もちろん、表現については様々なバリエーションがありますので、一概にはいえないかもしれませんが、少なくとも音楽表現上の文法というものがあったり、時代の様式があります。このあたりをベースメントとして教えているだけなのです。
「音楽は自由だ」と口でいうことは簡単ですが、その自由とは何なのかを考えなければなりません。音楽自体から多くのことを学ぼうとしなければ、それは勝手気ままな「雑音」にしかなりません。虚心に音楽のベースメントを構築する作業を怠ってはいけないのです。
長くなりましたが、来年も上記のような心構えでレッスンしていこうと思います。音楽には厳しくいこうと思います。そして音楽の本質を生徒さんがスンナリと受け取ってくれるように「楽しく」レッスンしていくつもりです!