2011年の演奏について「まとめ」書きます。
リコーダーとのデュオ。3月25日のリコーダー高橋明日香さんとのライブを押上天真庵にて行いました。実は3月11日震災当日にリハーサルをやっていました。それが最終リハーサル。さて、当日はどうなるかなあ、ということで、天真庵さんに連絡。コンサートなどが自粛ムードのなかで天真庵さん店主の「こういうときこそ、やりましょう!」の一言で目が覚めました。
いまだからこそ言いますが、こういうことにこそ人間の真価が問われます。「ながれ」でコンサートを中止する動き、音楽教室でのレッスン休止…という流れのときに、この野村さんの一言に勇気づけられました。野村さんなりの大局を見据えた判断だったと思います。こんな状況のときに「音楽活動ができない」という理由で、東京を離れるひとも多かったですから。私個人としては「東京で仕事をさせてもらっているかぎり、そして生徒がいる限り、東京を離れない」と決意していました。
実はその前の3月13日の日にも当教室のイベント「日曜ワークショップ」があったのですが、この状況だと誰もこないだろうなあ…と思いました。とりあえず私は行きました。来れるひとがいればひとりでもレッスンなりなんなり暇をつぶせばいいかなあ、とは思いました。結局来たのはひとりです。私のお弟子さんでした。
ふたりでそれぞれ適当に演奏しあって時間をつぶしました。音楽っていいな!って思いました。
3月25日でも世の中は「不安」だらけ。原発の問題、震災の被害状況が判明してきた時期でした。世の中には「こんなとき演奏会なんてやったって無駄」という空気が流れていました。だけど、前述の野村さんの一言で「やらねば」と思いました。「やらねば」というより、「やる」といった気持ちのほうが強かったかもしれません。音楽やってこそ音楽家、音楽が好きな人は爆弾おちてきてても音楽を聴くでしょ?…という気持ちでした。おかげさまでお客さんはちゃんと来ました。わざわざ当日予約して来てくれたひともいたのです。
実は3月20日にも急遽チャリティコンサートを企画しました。まだこの時点では震災の影響は鎮静化していませんでした。ギターのレッスンも通常通りおこなっていないところがほとんどだったでしょう(注:当教室は通常通り営業していました!)。私の弟子にも演奏してもらい、当日来てくれたギタリスト仲間の益田正洋氏も演奏してくれました。義援金も10万円弱、集まりました。
4月は益田正洋さんと数回デュオコンサートも行いました。4月末からは阿蘇の講習会のほうに行きました。北九州でも演奏しました。
5月には久しぶりにフルート奏者、山下兼司氏と演奏。
6月は当教室主催の重奏の会で、冨山詩曜氏に委嘱したアンサンブル曲を演奏。4月に行ったチャリティコンサートにいろいろと話し合い、冨山氏の震災に関する思いを曲にしてください…という依頼で実現した楽曲です。私が指揮をして当教室の有志でアンサンブル演奏しました。
6月28日には、ギター連盟のチャリティコンサートが大規模なかたちで行われました。これほどのメンバーが集まることはあまりないのではないか?…というくらい豪華なメンバーでした。
8月は長野の松本、安曇野にて演奏。講習会があったからです。
9月2日にはリコーダー高橋明日香さんと本格的なコンサート。オペラシティの近江楽堂にて。午後と夜の2回公演でしたが、なかなか面白いプログラムでした。プログラミングには「リコーダーとギターとのデュオの可能性」を考えて徹底的にこだわりました。9月11日には日本橋高島屋にてギター連盟の若手ギタリストを中心にチャリティコンサートもしました。
10月9日にはたまプラーザテラスにてギター連盟の企画によるチャリティコンサート。他、スペイン歌曲の伴奏などもやりました。ルイーズ幸代さんの伴奏でしたが、ロルカ歌曲の面白さを再発見しました。10月29日には「アルカンヘルを弾く名手たち」というタイトルのコンサートに出演。楽器の凄さを再発見しました。
11月はスペインに演奏旅行に行きました。途中まで池田慎司さんとのデュオ、その後、ソロも演奏、アンサンブルも演奏。たくさん演奏しました。
さて、このようにざっくりと書いてくると、311震災以降、5月いっぱいくらいまでは「先が見えない」状況だったような気がします。その後、真夏の節電騒ぎ…東電問題なので、なんとなく世の中は「震災被害地」の存在など忘れてしまったのかもしれません。
11月にスペインにいったときも、友人や知り合いのギタリストからは「日本は大丈夫なのか?」と訊かれることが多かったです。
まとまりませんが、とにかく今年は311震災と関連して、濃密でした。いろいろと考えることが多かったですが、正直言って今でも自分の立ち位置が見えません。こういうときは「音楽家」として生きるしかありません。とくに311震災直後に考えたことは、「演奏会は今後あるのだろうか?」という漠然とした不安でした。それは友人音楽家全員が持っていた「漠然とした不安」だったような気がします。
そういうときは自分のために演奏することもひとつの演奏家としてのスタンスです。精神を健全に保つための方策なのです。そして演奏会があることで「いつもどおり」の生活を感じることができるひとも多いのです。
被災地の現状はまだまだ「通常」どおりではありません。音楽家として、来年の3月11日に「どのように自分を位置づけているか?」…自分自身の課題です。
富川勝智
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