言葉の響き…人によっても違います。国によっても。
最近、言葉の響きのバリエーションが音楽のイメージを掴むのにとても大切であると感じています。
簡単に言えば、あるフレーズを歌おうとするときに、ガガガ(gagaga)と歌うのか、タタタ(tatata)と歌うのか、パパパ(papapa)と歌うのか?…元々持っているイメージがどのような「子音+母音」なのかを考えて弾くことが、ギターの音色感や音の立ち上がり感に影響してくるのだなあ、と思うわけです。
そして、その子音と母音の感覚は国毎に違うのかな?…と考えます。フランス人だったフランス人流の好みや嗜好があります。スペイン人も同様です。ドイツ人も。
極端な話、その嗜好が分からなければ、スペイン音楽に相応しい「歌い回し方」はまったく分からないとさえ言えます。
では、それをどのように身につけていけばよいのか?
各音楽家がどのようにフレーズを「歌うのか?」を少しずつ消化していくしかないような気がします。
ああ、この音は「パリラリターヤ!」と歌うのか!…と分かれば、その奏者のイメージが掴めます。そして、それが具体的に楽器の音色としてどう実現されているか?…優れた奏者であれば、その具体的な音から彼が心の中にもっている歌、つまりイメージが還元できるのです。
スペイン音楽であれば、優れたスペイン音楽の奏者の「歌い方」をよく観察することで、スペイン音楽の共通の歌い方と正しいイメージが形成されてきます。
海外に行って留学することも、そういう意味ではとても良いのだと言えます。海外現地の人々の言語感覚や音の響き…それを感じることで、その国の音楽をやる上でのイメージが湧いてくるのだと思います。例えばイタリアの街でオジさんが歌っている鼻歌にだって、イタリア人的な歌い回しが宿っているのです。
私は4年間スペインに留学しましたが、その点を意識し始めたのは2年経ったくらいの頃(遅かった…)。でも、最初の2年間習ったホセ・ルイス・ゴンサレス先生の歌い回し(実際のギターでの歌い回しも含めて)は、まさにスペイン音楽そのもの!…だったと思います。
その後、バルセロナでアレックス・ガロベー先生に習いましたが、ひたすら歌わされました。スラーをどのように歌うか?…フレーズの盛り上がりはどうなっているか?…いろいろなことを学ぶ良い機会でした。ああ音楽のイメージって(当たり前ですが)先に自分の中になければいけないんだなあ!…と実感したわけです。
この時期から、器楽奏者の人がどのようなイメージを持っているんだろう?と興味が湧きました。マスタークラスなどにいっても、あるフレーズの歌い方を説明するときの先生の歌い回し(実際の歌です)に注意を払うようになりました。
例えば、先生が「ここをお前は”ダダダダダターダ!”と弾いてるけど、もうちょっとしなやかに”タリラリティヤーーーア”と弾けないかな?」と要求したとしましょう。そうしたら、その場でその先生の言葉のニュアンスを復唱します。真似すれば良いのです。”タリラリティヤーーーア”ですね?…と。そうすれば、少しはその先生のイメージが自分の中に取り込むことができます。
私はスペイン留学中にたくさんのマスタークラスを受講しました。技術的にはもちろんですが、そういう「お国柄」を学ぶ良い機会であったと思っています。ドイツ、イギリス、スペイン、北欧、南米…いろいろな国の先生に学びましたが、それぞれにお国柄があります(もちろん個人差もあります)。いずれにしても「日本人にはない歌い回し」があったのです。
4月8日に当教室にてフランシスコ・クエンカ氏のマスタークラスを開講します。彼の具体的な音を聴けば「ああ、スペイン!」と思う筈です。マスタークラスでは言葉での説明もあります。そういう部分があれば、そこに注意を払ってください。音楽のイメージがその言葉にもあるはずです。どのように歌うのか?…どのようなニュアンスの言葉をセレクトしているのか?…そこに注意を払うことにより、音楽のイメージの源泉が掴めるはずです。
前回のフランシスコ・クエンカ氏のマスタークラスの様子はこちらのブログ記事でご覧頂けます。
ここは通訳の腕の見せどころでもあるわけですが、そのあたりは受講生及び聴講生の方も意識してレッスンの場を楽しんでいただければと思います。
フランシスコ・クエンカ 公開マスタークラス
期日:2014年4月8日(火曜)
会場:渋谷区文化総合センター大和田 大練習室
時間:午後1時15分〜午後5時
聴講料:2000円(当日お支払いください)
申し込み:tomikawaguitar@gmail.com
受講曲:アランブラ宮殿の想い出(タレガ)、ファンダンギーリョ(トゥリーナ)、月光(ソル)などを予定
※午後6時〜 渋谷にある当教室にてプライベート(非公開)でのレッスンも予定しております。もう一名ほど可能ですので、ご希望の方はご連絡ください。