ある生徒さんから質問を受けた。
生徒さん:「先生はいつギターを始めたんですか?」
私:「えーと、12歳ですね。厳密にいうと11歳ですが。」
生徒さん:「で、今おいくつですか?」
私:「35ですけど・・・」
生徒さん:「ということは、20年以上、毎日練習し続けていることになりますよね?」
私:「まあ、基本的にはそういうことになるでしょうね。日曜・祭日、年末年始とかを除いては練習しつづけたことになりますよねえ」
生徒さん:「途中、挫折とか、練習していて苦しい・・・楽しくない!!・・・って思ったことはありませんか?」
私:「というと?」
生徒さん:「うーん、例えば・・・義務感で練習しているとか・・・そういう風に感じたことはないかってことなんですけど・・・プロになるにはある程度の練習時間が必要なわけでしょ?。一日5時間弾くっていうのが義務感になってしまって、それで練習が嫌になる・・・という感じですよ」
私:「うーん、そういう感じになったことはないですね。基本的に“くやしがり”なので、“あいつができるのなら、俺にだって!!”とかコンサート行った後も“あそこどう弾いていたっけ?”とか考えて練習してきたような気がしますね。あと、自分の練習を録音して聴いてみると“うわ〜下手糞!!”とか思いますからね・・・その“下手糞”の理由を探して練習していくと、あっというまに2,3時間経っているという感じですかね。そしてその理由が発見できたとき嬉しい・・・その繰り返しですかね」
生徒さん:「僕も、子供の頃ギターを始めて独学でやっていたわけですが、そのうちプロになりたいって思い始めて、とにかく時間をきめて練習していたんですよ。そのうち、練習が義務感みたいになっていって、ぜんぜん面白くなくなった。それで、中断してしまった。いま、定年間近になって、久しぶりにギターを触ってみると、“あ!ギターっていいな!”って素直に思えるんです。」
私:「うん、そう思える状態だと練習も楽しいでしょう?」
生徒さん:「そうですね、今は若い頃と違って仕事の合間の時間を見つけては練習していますね。ほんとうに練習が楽しいですよ。今思うと、ちょっとでもいいからギターを練習していれば良かったなあ、とも思うんですが、やはり若い頃は練習がとにかく義務感のようになっていたもので・・・」
私:「ある意味で、義務感のようにおもうことも正解の場合もあるのでしょうけど・・・。そればかりだとやはり続きませんからね。モチベーションが維持できないというか・・・。そのためには刺激を受けないと駄目でしょうね。それでもモチベーションが維持できない場合もあるけれど、それでも必死にしがみついてレッスンを続ける・・・これが大事だと私は思っています。」
・・・以上のような生徒さんとの会話でしたが、私自身多くのことに気づかされました。今までたくさんの生徒を教えてきましたが、単純にいうとレッスンが長く続いている人は上達しています。途中辞めそうになってもなんとか、しがみついた人はやはり「頂上を目指して登り続けていること」になるのです。
楽器の上達は山登りに喩えられます。そして、その音楽という山の頂上は限りなく遠いのです。たとえ5合目で足踏みしていても、そこから見える景色をキープし続けることが大切なのです。そして上を見る余裕がでてきたら、ちょっと先に進んでみることが大事。
上に登りつづけるためには、レッスンは勿論ですが、コンサートやマスタークラスを受講してみること、そしてCDなどを聴くこと・・・たくさんモチベーションを上げる方法があります。どちらにしても積極的に動くことがスランプ打開への道となるでしょう。
人前で弾くこともモチベーションをあげる方法となります。発表会などに参加して他の人の演奏に刺激を受けることも大切です。私は生徒には基本的に「発表会は全員参加!」といっていますが、その理由もあるのです。
しかし、どのようにモチベーションを上げる努力をしたとしても、スランプに落ち込むことはあります。それでもレッスンだけは続けることが大事だと思います。生徒を教えてきた経験上、スランプに陥ったどのような生徒でも、マイペースで続けることで、いずれ道は開けるものです。そして、必ず以前よりも上達しています。
上記の対談(?)の生徒さんは、やはり若い頃に独学でやっていたことがスランプの原因だと思います。レッスンに通っていれば、先生からのアドバイスで目標が明確になりモチベーションがあがります。また教室在籍のほかの生徒さんから刺激をもらうこともあるでしょうし。
残念ながら、レッスンを続けたことがある人にしか本当のこの感覚・・・「山に登り続ける感覚」は理解できないのが真理でもあります。下山した人は平気で「レッスンなんて辞めたいときに辞めたほうがいい」というふうに言いますが・・・。
以上、上記のことは初級、中級レベルの人を対象に書きました。上級レベルの人はもちろん「自力で山を登り続ける方法」を身につけるべきです。しかし、それは決して「自称上級レベル」であってはいけません。自分でしっかりと練習の目標を定めつつ勉強し続けることが出来る人=上級レベル(「音楽家」といってもいいかもしれません)ですので、勘違いしないように。
そして「自力で山を登り続ける方法」を知ったところで、まだまだ音楽という山の頂上ははるか遠くにあるわけです。それを知っている人だけがプロの音楽家といえるのであり、その意味では、どのような巨匠であっても、「音楽の頂上まで至った」と名言している人はいないわけです。だから皆死ぬまで練習をし続けるわけです。
・・・ということで、私の場合はなんとか刺激を受けながら一応山登りは続けているのですね、今まで。
いろいろな刺激があったはずなのですが、それは次回のブログにでも書きましょうね。