最近、レッスン覚書更新ないので寂しいです!…というギターファンの方からメールを頂きました。
ということで、「それらしい」記事を書きますね。
最近、生徒さんがヴィラ=ロボスのブラジル民謡組曲を持ってきているので、楽しくレッスンしております。
ヴァルサ=ショーロは我が師匠、ホセ・ルイス・ゴンサレスの名演が記憶に残っています。なので、私にもその影響が強く残っているようです。
私としては、もう何年も前にレッスンを受けたっきりなので、細部は忘れているのですが、その生徒さんにレッスンして、「ここはこう、それはこんなふうにしたほうがいいんじゃないかなあ?」とアドバイスして、その生徒さんが帰宅してホセ・ルイスの録音を聴きなおすと「あ!先生の言ったとおりのことをやってる!」という部分が多いのだそうです。
師弟はやはり師弟ですね。おそらく教授法のアプローチは師匠とは違いますが、『ああ、やはり登山口は違っても、目指す頂上は一緒なのだなあ』と感じます。勿論、師匠と同じ極みへはまだまだ達していませんが…。
さて、昨日はガボット・ショーロのレッスン。
その生徒さんが基本として使っている楽譜はノード編のヴィラ=ロボス集です。それまでエシグ社からピースでばらばらで出ていたヴィラ=ロボスの作品を一冊にまとめ、しかも6000円程度という価格破壊を起こした名出版!…とはいっても、やはり実用版としては運指がきわめて少なく、初心者〜中級者にはとっつきにくいものであることは、ピース時代とそれほど変わりはありませんでした。
で、最近、運指付のヴィラ=ロボス作品集が出たわけです。これはジガンテ氏による詳細な運指付!…これでヴィラ=ロボス作品への取り組みが容易になったのはいうまでもありません。
上の写真。左がノード編作品集。右が最近でたジガンテ運指の新エシグ版。
さて、その生徒さんは、一体どっちの版を使ってガボット=ショーロをやってきたかというと…ノード編でした。実はその生徒さん両方もっています。
つまり、運指が振られていない「白文」状態の楽譜で練習してきたわけです。その生徒さん自身が考えた運指をふってきたわけですね。ジガンテ編は見ずに…。
このレッスンは実に楽しかったです。結局はその生徒さんのほとんどの運指を直すことになりましたが、その理由を説明しながら「赤ペン」をいれていったわけです(実際は鉛筆ですが)。
で、その次のレッスン時に、その生徒さんがジガンテの運指と比較してきたわけです。そうすると、かなりの部分で私とジガンテの運指が共通していたそうです。
ジガンテ氏は膨大な仕事量をこなす「現役プレイヤー」ですので、実用的な運指がしっかりと付されています。つまり指の素直な動きに則った運指を付しているというわけですね(もちろんプレイアビリティだけでなく、音楽表現にも配慮しているはず)。
私が運指直しをしたときも、そのあたりをチェックしていきました。左指の自然な流れを重視して運指をチェックしていったわけです。それがほとんどの場合においてジガンテ氏と一致したわけですね。
ギターの運指というのは、実に奥深いものです。
ある意味で経験と量がものをいいます。そして、あるギタリストが付した運指に対して「この運指じゃ駄目なのかなあ?」とかいろいろ試していくことで、いろいろな発見があります。そのためには優れたギタリストの運指を真似してみることも実に大切な作業です。(※だから、私はセゴビア編ソル20のエチュードを一回はそのままの運指でやらせます)
そういうお手本を真似していって、且つ理由を考えていきます。そういう勉強をしばらくしていく。そうしたら、運指なしの「白文」へ、自分なりの運指を付していく段階へ移行する。
この種の勉強をするのに、このヴィラ=ロボスのノード編と新エシグ版は両方持っておいて損はないと思いました。つまりノード編で自分なりの運指を付してみて、新エシグ編で「模範解答」を見る…というわけですね。
だから、例えば、セゴビア編ソルの20のエチュードをしっかりと学んだら、セゴビア編でない「普通のエチュード」を用いて自分なりの運指をふることや、もしくはソルが付している運指を研究してみることも大切なのです。
逆にいうと、詳細に運指が付された楽譜ばかりを使っていると、運指を付す「頭の使い方」が鈍る可能性もあるというわけです。なので、是非中級者以上の方は、自分で運指を付す練習をしてみると良いと思います。勿論同時進行で巨匠達の運指を研究することも忘れてはなりません。
(結論)→ヴィラ=ロボス「ブラジル民謡組曲」をやるなら、ノード編、新エシグ版、両方買うと(とっても)勉強になります!
(結論2)→印刷されている運指を全部修正液で消す…という荒業もあります。そして自分の運指を付けてみる。もちろん原版をコピーして、それにホワイトをいれていくのを忘れないように…。
(余談)→上記の生徒さんとのレッスンで、ひさびさにブリームの民謡組曲の録音を聴きなおしました。素晴らしい&感動…こういうのが「音楽」って言うんだなあ…涙が出そうになる名演。やっぱりブリームの遺した録音全部、CD屋の棚へは常備して欲しいですね。最近、種類が少なくなっているので…。