昨日はギター連盟主催第2回ギターコンペティションの全国大会でした。
私は審査員として出席いたしました。以下金賞と副賞というべき優秀賞、敢闘賞、熱演賞、努力賞のみ記載します。(以下敬称略)
A部門(幼年児童の部/11才以下)金賞:宇都宮有乃、鬼塚大輔/熱演賞:吉川誠太郎
B部門(ジュニアの部/12才〜15才)金賞:会所絢子、斎藤優貴/優秀賞:菅沼聖隆、努力賞:金子麻
C部門(青少年の部/16才〜22才)金賞:宇田奈津美
D部門(成人の部/23才〜35才)金賞:椎葉太一/敢闘賞:月澤寿恵
E部門(ミドルエイジの部/36才〜50才)金賞:志賀和浩/優秀賞:関口隆正
F部門(シニアの部/51才〜65才)金賞:鈴木幸男/熱演賞:長岡増男、敢闘賞:新宮原正三
G部門(ゴールドエイジの部/66歳以上)金賞:萩原えみ子/努力賞:山形克衛
グランプリ:会所絢子、鈴木幸男
(グランプリは子どもの部門ABより1名、C〜G部門より1名を選びました。)
審査員(以下敬称略):高島茂樹 高田元太郎 坪川真理子 富川勝智 藤澤和志 古川昭夫 山内淳
あくまでもこのイベントの主旨は「日本ギター界のアマチュアリズムの啓蒙」であるわけです。つまり一般のコンクールの審査基準とは違うわけです。つまり課題曲もありませんし、楽曲のレベルも違う(時間も違うわけです)。
細かいミスや読譜ミスなどはある程度多めに見る…ということがポイントで、それよりも「ギター音楽を愛しているか?」「音楽を楽しんでいるか?」…ということを想像しながらの審査となります。
…かなり難しいです。
はっきりいってしまうと「好き嫌い」ということが基準となるとは思います。
いかに個人的な覚書を書いておきます。(審査員全員の総意ではありませんので、その点を考慮してお読みください)
A部門
- (全体)まだ体も小さいので楽器の安定がはかれていない子も数人見受けられました。このようなイベントであれば、椅子は舞台上に一台…そして標準的なピアノ椅子という場合がほとんどです。普段の練習などで気をつけていればよいのですが、椅子の高さというものは重要です。椅子の高さによって右手のタッチのアングルもある程度は既定されてしまいます。
- 個人的には萩尾さんの演奏が好きでした。「サウダージ3番」全体のイメージをよく掴めていたと思います。若干低音が響かなかったのが残念ではあります。やはりラテンフレーバーの音楽にとって低音がしっかりと響かないのはマイナスとはなります。しかし、個人的にはその表現の練りこみ具合はとても好印象となりました。
B部門
- 惜しくも銀とはなりましたが、金子さんの選曲がとても好きでした。オルボンとカルレバーロでした。オルボンは私も弾いたことがありますが、とてもリズムの扱いが難しい曲です。しっかりと読譜して仕上げていたと思います。アクセントの扱いも丁寧で好感が持てました。
- 同賞の大見さんもしっかりとしたタッチの方でした。アストゥリアスでしたが、この手の曲を弾く事は、実はとても勇気がいることです。一粒一粒の音が明瞭に出ていないと成立しませんので…。その点をクリアーしているという点において、しっかりと普段勉強しているんだなあと思いました。
- 金賞でグランプリの会所さんは、とにかく良くコントロールされたテクニックの持ち主でした。個人的には冒頭部分のリズムの出し方をもうちょっと研究するとよいのかなあとも思いましたが…。トレモロのダイナミクスのコントロールは本当に絶品!
- (全体)もうこのB部門となると、音楽がしっかりとしてきます。逆にいうと音楽的に単調+弾き飛ばしている…というタイプの演奏はマイナスとなったように思います。
C部門
- (全体)この年代はほぼ大人の体格になる時期ですね。実は結果発表のとき審査員の立ち位置から出演者の背中をみていたのですが、このC部門〜D部門あたりの世代の背中の湾曲がけっこうひどい方多かったです。E部門以降になると、わりかし腰に気をつかったりする世代ですので(つまり無理がきかない世代?)、背中の形はわりかしすっきりとしているのですが…。この年代を指導することは一生のギターフォームに関わってくることですので、正しい指導を受けられることを切望します。
- 金賞の宇田さんはポンセの主題と変奏と終曲をしっかりとした表現をつけて弾ききっていました。若干ルバートが多すぎるかな?…という印象ですが、これは私の個人的好みかもしれません。
D部門
- (全体)全体の中でも、もっとも地味な部門だったかもしれません。ある程度の技術の完成があるためにかえって地味に思えてしまうのです。それでも、金賞の椎葉さんの技術的な安定感と音楽のバランスの良さはやはり金賞に相応しいものでした。
E部門
- 個人的にはプログラミングが好きだったのは、銀賞の塩崎さん。トローバのトリーハとポンセのワルツ…音楽的には両方とも唄がしっかりとありますので、ベストマッチだったように思います。
- (全体)部分部分の表現の完成度は非常に高い部門だったように思います。しかし、それが近視的なものになってしまってはいけません。もうすこし楽曲全体を見通した演奏表現を考えると、もっとよい音楽になったのになあ、という方が幾人かおられました。
F部門
- (全体)もっとも人数の多かった部門です。この部門になると実に一音一音が「ギターらしい響き」になってくるのです。もちろん楽器のレベルも高くなってきます。みな良い楽器を使っています。しかし、それがアダとなって、音楽表現…というよりも表現意欲が疎かになってしまう場合もあります。つまり音楽的に単調になるキライがあるのですね。それには気をつけてもらいたいとは思います。
- 上記の点において、金賞およびグランプリの鈴木さんは一つ頭抜けていた存在だったと思います。とにかく音楽作りが美しかったです。また「音の余韻」をしっかりと聞いてヴィブラートをかけていたのは鈴木さんだけだったように思います。もちろん、他の参加者の方もそのことを意識していたとは思いますが、実際にこちら側に伝わってきた方は鈴木さんだけでした。
G部門
- 萩原さんが審査員全員一致で金賞でした。丁寧で、それでいて美しい音楽でした。美しいアマチュアリズムを見た思いがしました。演奏順としても昨日最後の演奏者でした。美しい締めくくりだったと思います。
来年も開催されるギターコンペティション…実に楽しいイベントだと思います。全ての世代が参加できるイベントですので、是非みなさん参加してくださいね!