どの時代にも道筋をつける人というものがいるものです。

クラシックギター界においてもそういう人はいました。日本という国に限ってみれば、やはり1929年のアンドレス・セゴビアの初来日が「ギターの黒船」といわれるほど、それまでの日本のギター界にとっては衝撃的な事件であったようです。

セゴビア初来日については私も現代ギター2009年11月号に記事を書きました。「セゴビア1929年来日公演〜全プログラムを読み解く」というタイトルです。

現代ギター 2009年 11月号 [雑誌]
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「それまでの日本のギター界」と書きましたが、楽譜や資料などを通じて日本のギター音楽に関する研究も実はしっかりと歩みを進めていました。

日本の明治・大正期にもギターの音色に魅せられ、研究を進めていた人が少なからずもいたのです。そのことについて書かれた本が出版されました。今一読したところです。

ギターと出会った日本人たち 〜近代日本の西洋音楽受容史〜
ギターと出会った日本人たち 〜近代日本の西洋音楽受容史〜
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この本を読むと、セゴビア来日が「それまでの日本ギター界に内在していたある種の疑問」を解決し、道筋をつけた・・・ことがわかります。

興味深いのは、著者竹内氏の「アランフェス協奏曲」の受容に関する一文です。(本書180ページ以降)

レヒーノの初演、そしてイエペスによるイメージの確立。そしてブリームやジョンによる新しい解釈・・・そして定番化・・・という過程が描かれています。

つまり彼らも「道筋をつけていった人」です。

道筋をつけるためには、やはり「優れた演奏家」であることは前提です。天才的な感性と確信とでもいうのでしょうね。それを「正しい」と言い切れるパワーが必要でしょうね。

そしてそのためにはやはりそれまでの歴史や演奏史というべきものへの敬意がなくてはいけません。もちろん、理解も。

昨年私のリサイタルはスペイン1927年世代を軸にプログラミングしました。そしてそこへ「新しいスペイン音楽史感」を提供しようと思いました。もちろんリサイタルとして楽しめるように、音楽的に内容のあるものを盛り込んだつもりです。

自分なりに「道筋」をつけたつもりではいます。

それにしても、道筋をつけるためには時間も労力も要ります。単純にみんなが弾いている曲を弾くことなら考えなくて簡単なのですが。。。


いずれにしても、上掲の「ギターと出会った日本人たち」、クラシックギターにかかわる人であれば必読です。

先人たちがいかに苦労して、そしてギター音楽を愛し続け、資料を収集し研究し、現在の日本のギター界のベースメントを築いていったのか・・・理解することができます。

「道筋のつける」・・・その大切さがわかる一冊です。


 


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