巨匠ペペ・ロメロが1981年に出していて、ギタリストのあいだで「幻の教本」になりつつあった「La Guitarra」がやっと復刊されました。

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(ロメロ教本は一番左です)

ギターテクニックと演奏法についてペペ・ロメロが説明した本です。身体の動作の基本から、右手のタッチについて、左手の押弦について…細かく説明されています。奏法理論の本であると言っていいでしょう。

そのベースメントは彼の父であるセレドニオ・ロメロから伝授されたものです。そして、その奏法はタレガ派の流れを汲むものです。

このロメロ教本の中では、弾弦法や左手の機能などについて実に理論的に書かれています。『とりあえず音を出してみよう!』というノリの初心者用教材ではないですし、実に現代的です。その語られている内容は今や現代奏法のバイブルと言えるスコット・テナント著の「パンピング・ナイロン」と矛盾はまったくありません。(テナントとペペは師弟関係というのもその理由のひとつとして考えられます)

プランティング…という言葉もすでに1981年の時点でペペは用いています。余談ですが、プランティングという言葉こそ用いていませんが、我が師匠の著作「ホセ・ルイス・ゴンサレス テクニックノート」にもプランティングの記述があります。プランティングは決して最新の奏法などではなく、タレガ自身のメソッドの中にあったのは間違いありません。テクニックノートでは「準備」というふうにさらっと書かれているので気づかない人も多いかもしれませんね。
タレガがプランティングを用いていた事は、弟子達の口伝で伝わってきています。そう考えると、タレガがきちんと体系だって書かれたメソッドを残してくれなかったのは残念でなりません。

年末年始とこのロメロ教本を熟読して、その理知的な文章からかなり脳内の整理をすることができました。伝統的な奏法が決して現代的な奏法と矛盾するものではない!…ということが確認できました。また機会があれば、その内容などはブログなどにまとめてみたいと思います。

さて、話は変わりますが、年末にある生徒さんから「カルレバーロ奏法の演奏法の原理はどこで買えるのでしょう?」と尋ねられました。現在、絶版だそうで、Amazonなどでは8000円程度のプレミア値段になっているようです。信頼できる生徒さんだったので(苦笑)、年末年始の勉強用に貸してあげました。上の写真では一番右のものですね。

昨日その生徒さんとのレッスンでした。きちんと年明けに返却してくれました。「理解できた?」と訊いたら、「先生が普段教えてくれることから類推しながら、“翻訳”を“翻訳する”感じで読んだら、だいたい分かりました」とのこと。私はスペイン語で留学時に読んで、その用語の堅苦しさに辟易したものです。とある講習会に出席したときカルレバーロ奏法に詳しい受講生がいたので(カルレバーロの弟子の弟子だったのかな?)、これはチャンスだ!と思ってあれこれ質問してだいぶすっきりした記憶があります。分かってしまえば、あ!なるほど、そのコツね!…という感じで、右手も左手も非常にオーソドックスなギター奏法に則っていることがわかりました。

もちろん、既存の奏法を体系づけたのはカルレバーロの功績であるといえます。

つまり、カルレバーロ奏法とはいっても、巨匠達が口伝で伝えてきたコツを体系化し、理論づけただけなのです。

そこで思い出したのは、カルレバーロ理論をもうちょっと一歩先に進めたもの。エドゥアルド・フェルナンデスの教本です(上記中央)。この本は右手のテクニックについて、カルレバーロとは違ったアプローチをしていますね。関節の固定化についてはより体験的なアプローチで実感できるように編まれています。

左手に関しても、『ゼロ・バージョン』理論を見事に実践しています。指板の垂直方向と水平方向の動きを分化して最終的に組み合わせて行くという理論です。この理論(というよりは考え方)は、ギタリストによっては「セット」(左手の準備)という言い方をされることが多いです。左手の平行ポジションを基本として、そのバリエーションを考えるのが基本ですね。いずれにしても、ここまで理論化し、具体的に説明できるのは実に素晴らしいです。実際に楽曲を用いて解説してあるので、英語の原本でも理解しやすいと思います。

Eduardo Fernandez: Technique, Mechanism, Learning (Guitar Heritage (Mel Bay))
Eduardo Fernandez: Technique, Mechanism, Learning (Guitar Heritage (Mel Bay))

…という感じで、年末のロメロ教本をきっかけにギター奏法本を紹介してみました。…そう考えると、いずれ僕も教本をまとめてみたいなあとは思っています(実はこそこそと書き進めてはいます)。

富川勝智

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