最近、再び「セゴビア編によるソルの20のエチュード」を研究しています。

IMG_0141

















このエチュードとの付き合いは長いですね〜。かれこれ20年以上です。若い頃、本気でクラシックギターを勉強し始めたときに、「とりあえずセゴビア編のソル20だ!」と思って手を出しました。また師匠達にとにかくこれはやっておいて損はない!…とがっちりと指導を受けました。

スペイン留学して、ホセ・ルイス・ゴンサレス先生にも、「これはやっておいて損はない!」と留学して直後の三ヶ月程度でハイスピードで全曲レッスンを受けました。かなりのハイペースで進んだのですが、さすがのホセ・ルイス師匠ですね…ものすごいポイントをついたレッスンでしたし、目の前で実演されるとその説得力は半端なかったですね。今でもその印象は残っていますが、当時20代前半の僕には解明できなかった技術や運指上の意図も沢山ありました。ですが、今やっと分かって来た部分もたくさんあります。

それだけホセ・ルイス先生のレッスンは「問いかけ力」があったというわけです。そしてこの「セゴビア編によるソルの20のエチュード」を学ぶ際に大切なのは、以下の二点であると考えています。

1:セゴビアの運指通りに弾いてみること
2:アゴーギクや音価など正確に弾いてみること

1については、一部明らかに誤植であるなあ…という部分もありますが、セゴビアの付した運指通りに弾いてみることが大切です。セゴビアの運指法を学ぶことが実はこのエチュード集の目的でもあります。そして、ソルの原典に付して有る運指も参照できれば、「ここはセゴビア独自の考えだな!」と分かるわけです。

なので、私はセゴビア編ソルをレッスンするときは原典版として以下の本もよく引っ張りだしてきます。シャントレル社からでているソルのエチュード原典版です。ファクシミリももっているのですが、ちょっと見づらいので、こちらを使用しています。

IMG_0144


















もしできればソル教本などを参照してソルの運指法についても学ぶことが大切です。
お勧めはこちらの本。ソル教本の全訳はなかなか貴重です。資料としてもっておいて損はありません。



ソルの運指の意図、セゴビアの運指の意図、それぞれを理解すると古典〜ロマン〜近現代の奏法やギター音楽における表現の違いがはっきりと理解されてきます。その上でセゴビア編のソル20のエチュードを学ぶとセゴビアの意図(もしくは近現代のギタリストの音楽的嗜好)がはっきりと理解することができます。

原典版とセゴビア編ソル20のエチュードにおけるアゴーギグやダイナミクスの指示もしっかりと比較して勉強することも大切です。しっかりと見ていくとセゴビアの「ロマン派的音楽性」がはっきりと分かる部分も多いのです。

もうひとつ、比較する版として忘れてはならないのが「コスト編ソル教本」巻末に載っている「ソル26のエチュード」です。今、私の個人的な研究はコスト編とセゴビア編の相違点です。面白い発見がたくさんありました。

IMG_0143


















コストはソルの弟子でしたので、ソルの考えをしっかりと伝えようとしていますが、運指やアゴーギクに「コストらしさ」を感じる部分もあり、とても興味深いのです。このコスト編を若い頃のセゴビアは学び、そこからたくさんのものを学び、後世になり自身の版を出版することになったのだと思います。そのくらいコスト編とセゴビア編には共通する部分が多いのです。一番は、選曲です…セゴビア編20曲のうち17曲までコスト編に共通しているのですから!

あきらかにセゴビアはコスト編を若い頃に学習しているはずです。そして、1945年にセゴビア編ソルの20のエチュードは出版されたのです。

こちらが初版です!↓

IMG_0142





 











(セゴビア、若い!)

ソルのエチュード集としては、他にレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ版、ナルシソ・イエペス版があります。それぞれに個性溢れる運指法や表現が付されています。…なかなか奥が深いのです。

音源からも研究中です。
セゴビア本人のソルエチュード録音は現在でも入手しやすいですが、ジョン・ウィリアムズが若い頃に20曲全曲を録音してます(CD化はされていないはず)。

IMG_0140

















フレージングが本当に素晴らしい。そして音色の艶!…セゴビア編20のエチュードの美しさを最大限に表現しています。今でもたまに聴き直しますが、本当に素晴らしい。また私の師匠であるホセ・ルイス・ゴンサレス先生も同様にセゴビア編のエチュードをLPに録音しています(これはダビングされたものを私は持っています)。これも、非常に素晴らしい…。

ふたりともセゴビアの弟子でしたので、その影響が分かります。そのあたりもじっくりと研究しています。

いずれ、20のエチュード、全曲演奏会…やってみたいなあ!なんて考えています。