2016年2月27日と28日「19世紀オリジナルギターによるDUOコンサート」を開催いたしました。
まずは名曲喫茶カデンツァさんにて、初日。
たくさんのお客様にいらしていただけました!毎回カデンツァさんではいろいろな形でライブをさせていただいておりますが、今回の客層はいつもちょっと違う感じ。クラシックギターとは関係のない方のほうが多かったかな?カデンツァさんの音響はいつもどおり素晴らしいです。19世紀ギターのニュアンスを無理なく再現してくれる会場です。
二日目は玉川上水駅にある「ステッチ」さんで。
こちらもたくさんのお客様にきていただけました。本当に嬉しい。
玉川上水のステッチさんは初めて弾きましたが、十分に後ろのほうまで音の届く素晴らしいサロンでした。音響上では、音が開きすぎない設計だと思いますので、十分に私たちのデュオのディテールを聞き取ることができたのではないかと思っています。
両公演ともお客様の感想をたくさんいただけました。19世紀のサロン音楽の雰囲気を楽しめた…ガット弦の独特の響きに癒された…とても息のあったデュオ演奏だった…いろいろと嬉しい意見をいただきました。また再演してほしいという要望が多かったので、いま長谷川さんとプランを練っております。
プログラムは以下のような感じでした。
ソルとロイエの人気が高かったかな?…いずれにしても前半三曲、後半二曲という「男気あふれるプログラム」でした。とはいっても、エンターテイメント性の高い楽曲が多かったので、冗長に感じることはなかったという嬉しい感想もありました。19世紀の音楽は「人々が楽しむもの」を主眼としていますから、それは当然といえば当然ですよね。本人たちが演奏し、楽しむ。もしくは近くのギターを弾く人の音を楽しむ。
ラジオも録音物もない時代です。当時の人々にとっては音楽を聴く手段は演奏会にいくか、自分たちで楽器を奏でて楽しむか…それしかなかったのですから。なので、当時の「ヒットソング」がギターに編曲されて、楽譜で出版され普及していくのです。
オリジナル楽器とガット弦による演奏会はまだまだ日本では少ないです。というよりも世界的にもレアです。このことに気づいている人が実はお客さまに少なかったようです。MCでしきりに長谷川さんが念押ししていました 苦笑。
私本人も昨年から楽器のセッティング(弦の選定)とタッチの微調整をしてきて、本番に臨みましたが、やはり「あ、これぞ当時の響きだ!」と感じる瞬間が多々ありました。本番を乗り越えるとさらにそれを実感しております。
興味津々に我々の19世紀オリジナル楽器の音に耳を傾けていただいたお客様になんらかの印象は与えることができたのではないかと思っています。
以下私が今回の演奏会を通じて感じたことを簡単にまとめておきます。
1:カルッリやジュリアーニのエンターテイメント性
2:テルツギターの可能性
3:ガット弦の音の特質
1:イタリア人の音楽というのはやはり「人の耳を楽しませる」という点において、強いなあと感じました。カルッリ=初心者のエチュード?という印象が未だに強いクラシックギター界ですが、今回演奏した「ベートーヴェンどっさり」やアンコールの「ノクターン」などを聴けば、当時人気があった理由がわかるはずです。ジュリアーニの「グランポプリ」も、サービス精神てんこもり!…このあたりの観点を忘れがちなのが一般のクラシックギター界なのかもしれません。
2:テルツギターでしか表現できない音楽の「レンジの広さ」があります。テルツギターの音の特質はからんころんとして、それでいて太さもあります。言ってみると良いウクレレや良いリュートのような質感があります。そして、まろやかなマンドリンのような響きも備えています。19世紀中庸にウィーンで流行した楽器ですが、まだまだレパートリーはありますので、また演奏してみたいです。当時流行した理由は当時の楽曲をひたすらに演奏することでしか分からないものです。
3:ガット弦を利用して、奏者2名ともガット弦で行いました。実際に演奏会で利用してみると、「アンサンブルにふさわしい」音色を備えていることがわかります。特に中音域の音色は倍音がうまく抑制されていて「音が散りません」。モダンギターの3弦や4弦はやはり輝かしく抜けがいいのですが、それがギター二台のアンサンブルのときに「声部がわかりにくい」という結果を招くことがあります。そのほか、ガット弦の特質はいくつかあげることができます。滑舌の良さやスラーなどのニュアンスのレスポンスの良さ。
以上、簡単にまとめておきましたが、お客様には「音を素直に受け取ってもらう」ということをしていただければよいと思います。そして、持ち帰った印象を忘れないでほしいなあと思います。もしかしたら、そこに「音楽の真実」があるのかもしれませんから。