生徒さんから、こんな質問を受けました。
「先生はどうやって譜読みしているんですか?」
なんという興味深い質問!!
譜読みというと、まず音を間違えずに拾う作業、指使いを決める作業、最後に音楽的に仕上げていく作業、というふうに考えられがちです。
でも、実際にはそう単純ではありません。
音を読む段階から、すでに音楽は始まっています。
どの音が大切なのか。
どこに呼吸があるのか。
和音の響きはどちらへ向かっているのか。
フレーズはどこで緩み、どこで少し前へ進みたがっているのか。
そうしたことを考えながら楽譜を読んでいかないと、あとから「音楽的にする」という作業が、ただの後付けになってしまうことがあります。そして、実はそういうことがわかっていないと運指つけも失敗するもんです。
このことを考えると、スペインのバルセロナで学んでいた頃のことを思い出します。
師事していたアレックス・ガロベー先生は、よくこう言っていました。
「一番最初に楽譜を読んだ時から、音楽的な部分をきちんと攻めろ」
つまり、譜読みの最初から、音楽としてどう立ち上げるかを考えるということです。
今回の動画では、佐藤弘和さんの《すすきの穂が揺れる》を、ほぼ初めて楽譜に向き合うところから読んでいます。完成された演奏を聴いていただく動画ではなく、演奏者が楽譜を前にして、どのように音を拾い、フレーズを考え、指使いや響きの方向を探っていくのか。その過程を見ていただく内容です。
《すすきの穂が揺れる》は、タイトルの通り、風景が静かに浮かび上がってくるような作品です。派手な技巧で押し切る曲ではありません。音の間合い、響きの揺れ、余韻の扱い。そうした繊細な部分が音楽の表情を作っていきます。
そして実はこの曲、7月にメキシコから来日するギタリスト、ホアン・カルロス・ラグーナと一緒に演奏する予定になっています。7月15日、新大久保のスタジオ・ヴィルトゥオージでのコンサートです。
つまり今回の動画は、本番へ向けての練習動画でもあります。(どう仕上がるか気になる人は来てくださいね!)
もちろん、初めて読む段階ですから、止まったり、考えたり、迷ったりもします。でも、その迷い方そのものが大切なのです。どこで立ち止まるのか。なぜ弾き直すのか。何を確認しているのか。そこに、その人の譜読みの方法が出ます。
プロの演奏家が楽譜と向き合うとき、最初に何を見て、何を考え、どのように音楽を立ち上げていくのか。
生徒さんの素朴な質問から始まった今回の動画ですが、譜読みという作業の本質を考える、なかなか面白い記録になったと思います。
