2026年7月15日、僕の誕生日当日に、東京・新大久保のSTUDIO VIRTUOSIにて「富川勝智 Birthday Concert」を開催します。
今回は、メキシコを代表するギタリスト、ホアン・カルロス・ラグーナ、歌手ソフィア・ルローニをスペシャルゲストに迎えます。また、石塚裕美さんにもゲスト出演していただき、ギター独奏、歌とギター、ギターデュオによるプログラムをお届けします。
このコンサートは、いわゆる通常のリサイタルというよりも、僕自身がこれまで歩んできた音楽の道のりを、親しい音楽家たちと一緒にたどり直すような内容になっています。
まず私のソロでは、これまでにリリースしてきたCDから作品を選びました。
ここで取り上げるのは、CD「組曲プラテーロとわたし」、CD「あなたとわたし」、そしてCD「ヨウジとわたし」からの作品です。すべてのアルバムタイトルには「わたし」という言葉が入っています。
もちろん、それぞれのアルバムはまったく違う時期に、違うコンセプトで制作したものです。しかし、今回あらためて並べてみると、そこには僕自身がギターを通して何を見てきたのか、どのように音楽と関わってきたのか、という「わたし」の変化が見えてきます。今回のソロ・セクションは、単なるCD収録曲の再演ではなく、いくつかの「わたし」をたどる時間でもあります。
CD「組曲プラテーロとわたし」からは、エドゥアルド・サインス・デ・ラ・マーサ作曲の組曲「プラテーロとわたし」より《プラテーロ》と《死》を演奏します。スペイン文学の名作「プラテーロとわたし」をもとにしたこの作品は、ギターによる詩的な語りの世界を持っています。明るさ、静けさ、孤独、そして死の気配。スペイン近代ギター作品の中でも、非常に繊細な表情を持つ作品です。
CD「あなたとわたし」からは、アントニオ・ヒメネス・マンホンの《あなたとわたし》を演奏します。マンホンは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したスペインのギタリスト・作曲家で、ロマン派ギターの香りを色濃く残した作風を持っています。《あなたとわたし》は、技巧を見せるというよりも、ギターが持つ親密な響き、語りかけるような旋律の魅力を味わえる作品です。
さらに、2025年にリリースしたCD「ヨウジとわたし」から、久保田洋司作曲の《君が眠っている間の世界》《ヨウジとわたし》を演奏します。クラシックギターの語法を大切にしながらも、ポップスの旋律感や、日常の中にある柔らかな感情が自然に入ってくる作品です。
スペイン文学とギター、19世紀スペインのロマン派、そして現在進行形のコラボレーション。時代も様式も違いますが、そこに共通しているのは、ギターを通して「わたし」と「誰か」、「わたし」と「世界」との距離を見つめていることなのかもしれません。
石塚裕美さんとのデュオでは、CD「武満徹SONGS うたうだけ」から、武満徹作曲の《ぽつねん》《ワルツ》を演奏します。
武満徹の歌曲は、言葉と音の距離感がとても独特です。はっきりと感情を説明するのではなく、言葉の奥にある沈黙や余白が音楽になっていく。その世界を、歌とギターという小さな編成で演奏することで、より近い距離で聴いていただけると思います。《ぽつねん》では谷川俊太郎の言葉、《ワルツ》では岩淵達治の言葉が、武満徹の音楽とともに静かに立ち上がります。
そして今回の大きな柱のひとつが、メキシコから来日するホアン・カルロス・ラグーナとの共演です。
ラグーナ氏はメキシコを代表する名ギタリストです。今回はソロで、佐藤弘和作品《ベイビーズソングス》《花の宴》を演奏します。
佐藤弘和さんは、僕にとってとても大きな存在です。スペインから日本に帰国してから、演奏活動や音楽のことについて多くのアドバイスをいただきましたし、個人的にも深いつながりのある方でした。
佐藤さんの音楽には、ギターという楽器の響きをよく知っている人ならではの自然さがあります。決して大げさではなく、けれども和声や旋律の中に、深い優しさと透明感がある。その作品は、演奏していると、こちらが無理に何かを足すのではなく、音そのものに耳を澄ませることを求めてくるように感じます。
今回、ラグーナ氏が佐藤弘和作品をソロで演奏してくれることは、とても大きな意味があります。日本の作曲家によるギター作品を、メキシコの名手がどのように響かせるのか。僕自身もとても楽しみにしています。
また、僕とラグーナのギターデュオでは、同じく佐藤弘和作曲の《風のはこんだ4つの歌》を演奏します。
第1曲《すすきの穂が揺れる》、第2曲《舞い降りる粉雪》、第3曲《花の香にのせて》、第4曲《熱風の中で》。それぞれの曲に、風景と時間、そして空気の感触があります。二台のギターで演奏することで、旋律と伴奏という単純な関係ではなく、二人の奏者が同じ風景の中に立ち、音を受け渡していくような作品です。
現在、この《風のはこんだ4つの歌》の練習動画をYouTubeにもアップしています。単なる練習記録というより、僕にとっては佐藤弘和さんへの追悼の意味もあります。作品と向き合い、その音をもう一度自分の身体に通していく。その過程を残していくことも、いま自分にできる追悼の形なのだと思っています。
さらに、ラグーナとソフィア・ルローニによる歌とギターのデュオでは、《Las Golondrinas》《La Llorona》を演奏します。《Las Golondrinas》はラテンアメリカで広く親しまれている名歌で、別れや旅立ちの情感をまとった作品です。《La Llorona》はメキシコ民謡として知られ、深い哀しみと強い生命感を併せ持つ歌です。ソフィアの声とラグーナのギターによって、今回のコンサートにメキシコの空気が加わって広がりのあるものにしてくれることでしょう。
そして、このコンサートにはもうひとつ大切な意味があります。
本公演は、2025年に逝去したギター製作家・桜井正毅さん、そして2016年に逝去した作曲家・佐藤弘和さんに捧げるコンサートでもあります。
桜井正毅さんは、日本のギター製作において大きな足跡を残した製作家であると同時に、僕が代表理事を務める公益社団法人日本ギター連盟とも深いつながりのある方でした。東京国際ギターコンクールの運営をはじめ、連盟の活動においても多くのアドバイスをいただいた存在です。
佐藤弘和さんもまた、僕にとって非常に大きな存在でした。スペインから日本に帰国してから、演奏活動や音楽のことについて多くの助言をいただき、個人的にも深いつながりのある方でした。
今回のプログラムでは、佐藤弘和作品が大きな柱になっています。ホアン・カルロス・ラグーナによる《ベイビーズソングス》《花の宴》、そして僕とラグーナによるギターデュオ《風のはこんだ4つの歌》。これらの作品を通して、佐藤さんの音楽が持つ優しさ、透明感、そしてギターという楽器への深い理解を、あらためて響かせたいと思っています。
誕生日の夜に、自分のこれまでの録音作品をたどり、親しい音楽家たちと共演し、そして大切な人たちへの想いを音にする。
ギター、歌、スペイン、メキシコ、日本。
いくつもの時間と場所が重なっていく一夜になると思います。
ぜひ会場でお聴きください。
富川勝智 Birthday Concert
日時
2026年7月15日(水)
18:30開場
19:00開演
会場
STUDIO VIRTUOSI
スタジオ ヴィルトゥオージ
〒169-0073
東京都新宿区百人町2-16-17 B1
出演
富川勝智
Special Guests
ホアン・カルロス・ラグーナ Juan Carlos Laguna
ソフィア・ルローニ Sofia Rulloni
Guest
石塚裕美 Hiromi Ishizuka
プログラム
富川勝智 ソロ
E. S. de la Maza:組曲「プラテーロとわたし」より《プラテーロ》《死》
A. J. Manjon:《あなたとわたし》
久保田洋司:《君が眠っている間の世界》《ヨウジとわたし》
富川勝智 × 石塚裕美
武満徹:《ぽつねん》《ワルツ》
ホアン・カルロス・ラグーナ ソロ
佐藤弘和:《ベイビーズソングス》
佐藤弘和:《花の宴》
富川勝智 × ホアン・カルロス・ラグーナ
佐藤弘和:《風のはこんだ4つの歌》
ホアン・カルロス・ラグーナ × ソフィア・ルローニ
《Las Golondrinas》
《La Llorona》
チケット
一般 3,000円
学生 1,000円
全席自由
ご予約
予約フォームまたはメールにてお申し込みください。
予約フォーム
https://ws.formzu.net/dist/S200920787/
お問い合わせ
tomikawaguitar@gmail.com
後援
河野ギター工房
