ギターレッスンと演奏の日記 from 富川ギター教室

クラシックギターの「伝道師」富川勝智のギター教室でのレッスン活動と演奏活動の記録です。

楽曲解説

2019.8 新サイトOPEN!
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富川ギター教室(東京渋谷) https://tomikawaguitar.com
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※他に池袋現代ギター社でもレッスンしています

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1曲を15分で解説できるのか?



コロナ禍に入った頃、結構動画をアップしました。時間があったというのもありますが、自分の勉強という意味もありました。

その中で割と人気があったのが「クラシックギター名曲を15分で解説」というもの。

とりあえず僕がその曲を弾く。そして、タイマーを押して15分で曲のポイントを説明するというもの。クラシックギター初心者や中級者くらいの方のためというのがあるので、現代ギター社の「発表会用ギター名曲集」を頭から順番に。



で、14曲ほどやって、その他のやることがあったり、YouTubeでは別企画を始めてしまったり、途中でストップしていたのですが、いまだに「これの続きはやらないんですか?」というリクエストが多いので、再開してみました。

基本的に一発どりですから、頭の演奏がうまくいかないとタイマーをスタートできない。で、演奏はうまくいったのだけど、ポイント解説でしどろもどろになってしまって、やり直しとかw

とはいえ、しゃべっていると「ああ、そういうことだよね」とか、割と自分でも客観的にアイデアが浮かんできたりとかします。なので、勉強にはなります。何よりも15分でえいやっ!と全体を説明しなくちゃいけないので、締め切り効果があります。程よい緊張感の中で、ささっと簡潔に。そして伝えたいことはポイントを絞って言うトレーニングとなっています。

とりあえず、上記曲集の40曲目くらいまでやってみようかなあーとか考えてます。

実際に自分の生徒さんでも、習っている曲の予習や復習に動画を見ている人もいるようなので、その人たちのためにも。そして、日本全国で独学で頑張っている人や、他の先生に習っている方でも「こういうアプローチの仕方があるのかー」と思ってもらえれば嬉しいなあと思います。




歌うことと表現〜マイヤーズのカバティーナ攻略法

日曜日のワークショップは旋律をテーマにしたいと思っています。講座タイトルは「音楽表現講座 歌うことでわかること 気づくこと」にしました。



歌うこと。クラシックギターの人がもっとも不得意なことかもしれません。

簡単に言ってしまえば、どのような器楽曲でも声部を実際に声に出して歌ってみるということは「音楽表現」を考える際にとても大事な作業です。以下3つのことを考える良いきっかけになります。

1:フレーズと音のグルーピングのしかた
2:音程感の感じ方
3:歌い手による倍音コントロールのちがい

音楽表現面でこのことが実感できたら、それを楽器でどう実現していけるか?ということですね。ここから必要な技術も導き出すことができます。

実際に声に出して歌ってみることで、ああ、このフレーズはここまでだろうな?とか、この音程は歌いにくいなあ!とか、この旋律はもっとしなやかな音色で歌いたいなあ、とか考えることができます。

この場合歌のトレーニングは受けていなくても良いのです。風呂場の鼻歌程度でおっけーです。


さて、ここから歌詞との関連を。もし歌詞がついてるバージョンがあるなら、フレーズのストーリー作りに歌詞はとても参考になります。良い作詞家は曲の旋律を吟味し分析し、その表情に合わせた歌詞を当てはめていきます。歌詞が先の場合は作曲家はその歌詞のイメージに近い旋律を当てはめていくのです。(そこに作詞や作曲の難しさと職人技があるのです)

ギター独奏で有名なマイヤーズのカバティーナがあります。もう数え切れないほどレッスンしてきましたが、レッスン時に「これ、歌詞付きのバージョンあるよー。今ならYouTubeとかで探せばすぐでてくるよー」とミニ情報を授けることがあります。でも、だーれも次のレッスンまでに聴いてこないもんです 苦笑。

歌付きバージョンあるのかー、という程度。それがどれほどまでこの楽曲の表現を考える際にやくに立つのかを考えようともしない。

簡単にわかりやすいようにハ長調でメロディーと歌詞を書き出してみました。
カバティーナ冒頭





He was beautiful,
Beautiful to my eyes.

ここで、皆さんに歌詞とメロディーの対照をとっていただきたいのですが、「びゅてぃほー」が二回繰り返されるとこは同じ旋律になっています。歌詞をつけた人はよく考えています。同じ歌詞、同じ旋律。二回目をどう歌うか?・・・それを考えるべきです。

「ひーわずびゅてぃほー」までは一息で歌うべきです。曲のテンポが自ずと導き出されます。

さて、「ひー」と「わず」どちらに力点を入れるか?「彼は〜だった」と過去のものであることを回想するよう考えてみると、「わず」をしっかりと噛みしめるように歌うと良いのかもしれません。彼は・・・と歌っておいて、もうその彼はいないんだ・・・とわからせる歌い方をしなくてはいけません。

さて、繰り返される「びゅてぃほー」ですが、二回目を強く念押しのように歌うか、儚く歌いかはセンスです。好みの問題とも言えます。何れにせよ、全く同じ音量、同じ噛み締め方で歌うのは芸がない。

「とぅまいあーいず」は、どの単語に力点をおくか。男女の関係からすれば、「私」に力点を置くのが良いのかもしれません。「私には」と「私の目には」も同じ意味合いがあるので、もしかしたら「眼」にはあまり深さを入れなくても良いかもしれません。

以上のように歌詞だけみても、たくさんの旋律の歌わせ方のヒントが出てきます。

そして、もし歌詞がなくても、そういう分析ができなければなりません。歌詞があれば(もしそれがきちんとした作詞家がつけたものならば)よりヒントが多くなるということは言えます。


さてさて…

そういうことをいつも考えながらレッスンしていたりするのです。基本的に僕は歌好きなので、たくさんのことを歌から学ぶことができますし、音楽表現の根本は「歌」にあると思っております。

で、3/3の日曜ワークショップは「旋律」をテーマにします。興味のある方はぜひご参加ください。

詳細はこちら







著作新刊!〜名曲てんこもりBOOK Vol.2

2006年に出版された「クラシックギター 名曲てんこもりBOOK vol.2」の新装版が発売されます。その見本誌が届いたのでご紹介します。てんこもりBOOKのシリーズは以下の内容になっています。

1:楽譜
2:楽曲解説と奏法解説
3:模範演奏CD

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楽曲解説と奏法解説は複数の執筆者で書いております。僕もvol.1からvol.3までたくさん執筆させていただきました。

たとえば、今回はラウロの曲ではホローポについて解説しております。

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ヘンデルのサラバンドでは左手の和音の押さえの難所のコツを解説していたり…。

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…と、いろいろと文章でかいていたり、図をつかったり、楽譜をつかったりして解説を丁寧にしております。

実はこの解説はかつて現代ギター社からでていた「名曲演奏の手引き」というものに掲載されていた先輩ギタリストのものも一部転載されており、それもとても参考になるものなのです。この「名曲演奏の手引き」は僕は修行中に手垢がつくほど読み込みました。それが、今でも役にたっております。

その意味でも、この「てんこもり」ですが、若手ギタリストやプロ志望の方は必携といってもよいレファレンスとなるでしょう。

さてさて…かつて出ていたバージョンはこんな感じです。
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かつてのこのバージョンにも実は良い点があったのです。「楽譜が分冊になっている」ということです。実はこの分冊の楽譜は「コンパクトな小品集」ということでとても重宝しており、今でもちょっとしたコンサート仕事などにはアンコール曲集として持ち歩いたりしております。

この分冊という点がなくなったのは惜しいなあとは思いますが、その分値段が安くなっています。お買い求めやすいお値段…ということでそのあたりは妥協しましょう。

その後、実は「帰ってきたてんこもり」ということで、2009年に一巻と二巻の合本がでたこともありますが、解説がばっさりとカットされた「ただの曲集」だったので、かつての「てんこ盛り」ユーザーからは不評だったようです。

ということで、ふたたび解説つきで新装版がでるということになりました。トータルな面でおすすめの楽譜集です!とにかく名曲揃い。




vol.3とvol.1もすでの発売中です。





…なるほど、こう並べてみると、、、、信号機の色ですね!

いずれも独学の方にも習っている方にも「おすすめ」の曲集です。そして、ギターを教えている方にも「おすすめ」です。日本のトッププロギタリストが楽曲解釈をどのように考えているのか…それがわかります。

もし、ここに解説を書いているギタリストにレッスンを受けることを考えたら…なんとリーズナブル!…vol.1からvol.3まで全部買っても、一万円以下。是非、全部購入してくださいね。



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セゴビアエチュード研究…8/20日曜ワークショップ

実はこっそりと日曜ワークショップでセゴビア編20のエチュードのワークショップが続いています。

このワークショップ、隠れた人気となってまして、第一回目からほとんどメンツがかわりません 苦笑。数ヶ月おきの「授業」感覚で、行っております。とはいっても、今回から初めて…という方でも歓迎です。原則的に、扱っているエチュードの内容にそって説明していきますので、自分の興味のある「番号」のときにでていただければオッケーです。

次回は8/20に開催します。毎回数曲をとりあげて、ソルの凄さとセゴビアの凄さをわかってもらおうというワークショップになっています。もちろん、音楽表現についての基本的な事項の「おさらい」も行っています。

今回は6番と7番を扱います。実は「隠れ名曲」である6番ですが、この曲を聞くだけで「基礎力」の差がはっきりとわかります。レッスンをしていても、この6番でひっかかってしまう方…多いのです。
7番では、おもに左手のテクニックを見ていこうかなと考えています。

興味のある方、是非出席してください。申し込みは不要です。「学ぼう」と思ったときに、すぐに参加…してください。おそらく…他の先生が教えていない「音楽表現のコツ」「技術の一番根幹の部分」を学べます。騙されたと思って、時間を割いて参加してくださいね。

前回の様子はこんな感じです。


今回の詳細はこちらのブログ記事をお読みください。



 


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アリリオ・ディアス他界〜彼の功績(エディション)

2016年7月6日、ギタリストであるアリリオ・ディアスの訃報を受け取りました。92歳まで生きたので、天寿を全うしたといえるでしょう。

92歳でアリリオ・ディアス他界(ベネズエラのネットニュース)

ほんとうに素晴らしい業績を残したギタリストであり、パフォーマーとしても素晴らしい演奏家でした。その実演、録音…すばらしい芸術を我々に残してくれました。

僕はほんとうに彼の大ファンでした。教室には彼の肖像画も飾っています。その音色、グルーヴ、音楽の勢い…憧れでした。
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さて、アリリオ・ディアスという人が残した業績というのは具体的になんだったのだろう?…いまから簡単にまとめてみたいと思います。

  1. アンドレス・セゴビア、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの後継者としてクラシックギターの正当な奏法と美学を継承した
  2. 南米ギター音楽の素晴らしい紹介者であった
  3. バリオス・マンゴレの作品の正当な継承者として、その普及に尽力した
  4. ナポリ民謡集をはじめとして素晴らしい編曲を残した
1について。セゴビアとレヒーノに学び、その両者から素晴らしい技術と美的感覚を継承していると言えます。彼のレパートリーは一見「セゴビア・レパートリー」を中心にしているように見えますが、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやその弟のエドゥエアルドの作品(たとえば、ボレロなど)の録音も多数残しています。このあたりは実に興味深いです。どちらかの流派に属することなく、自由に行き来ができたのは彼の人徳あってこそ…とも言えるかも。

2について。 南米ベネズエラの出身であり、アントニオ・ラウロやソーホなどの素晴らしい紹介者でした。「ラウロ=ベネズエラワルツ」というくらいが、まさのそのオーソリティだったと言えます。実際にラウロの諸作品を弾く場合にはディアスの録音などを参照するべきとも言えます。
このようなベネズエラ音楽のアンソロジーも編曲編纂しております。
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3について。アグスティン・バリオス・マンゴレは現在では「超メジャーな」クラシックギター作曲者ですが、実は1960年代までは「忘れ去られたギター作曲家」でした。その作品はヨーロッパで知るものはほとんどいなかったといえます。バリオスの作品をヨーロッパの持ち込んだ最初のギタリストのひとりがディアスであったといえます。ディアスはヨーロッパ最初の留学先をマドリッドと決め、レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの門下となります。

そこで同時期に学んでいたのが若き日のホセ・ルイス・ゴンサレスでした(我が師匠です!)。実はホセ・ルイス先生も素晴らしい「バリオス作品の演奏者」でした。郷愁のショーロやパラグアイ舞曲、フリア・フロリダ…名演奏でしたが、これらのほとんどを若き日にディアスの演奏から知ったといいます。ディアスが弾いているのを見て、覚えていったと話していました。

その後、1980年代以降に、ジョン・ウィリアムズが積極的にバリオス作品を取り上げたのでバリオスは世界的に有名になりますが、最初のヨーロッパへの紹介者はディアスだったといえます。結局はアリリオ・ディアスの南米音楽のセンスがなかったら、あのジョンですらバリオスの名演奏は不可能であったといえるでしょう。

そして何よりもバリオスの弟子であるラウル・ボルヘスにディアスはギターを現地で習っています。つまりバリオスの孫弟子にあたるのです。ディアス校訂のバリオスの楽譜がでていますが、その意味でも資料的に信憑性のあるエディションとなっております。ディアス本人も優れた演奏者ですので、ほんとうに「実用版」と言えるエディションであると言えるのです。

現在、ディアス編のバリオスの楽譜は一冊にまとまって出版されています。大変お買い得!(ピースでじみちーにコレクションしてコンプリートした瞬間に、一冊にまとまってでてしまいました)
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4について。イタリアにも長く住んだディアスでしたが、ナポリ地方の民謡を独自に採取しギター編曲したものもほんとうに素晴らしい仕事といえます。その録音を聴くと「超絶技巧と音楽性の絶妙なバランス」が感じられます。僕個人のなかで、ディアスのナポリ民謡集の録音とその編曲は「クラシックギター音楽における民謡アレンジの金字塔」ともいえます。
これも昔はピースででていたものが、今は合本で買えます!
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このナポリ民謡のアレンジは数曲僕も実演したことがありますが、はっきりいうと超難曲…です。ディアス本人の録音がないとニュアンスが掴みにくい部分も多いのですが、是非今後たくさんの方にチャレンジしてほしい名編曲ではあります。

さて、いろいろとディアスの業績をまとめてきました。主に楽譜出版(エディション)に関するものを紹介してきました。彼が亡きあとも「素晴らしい仕事」が残っていくことが僕の願いです。

じみちーにディアス先生のエディションはバリオスにしても、ナポリ民謡集にしても研究しているのですが、たくさんの示唆とアイデアを与えてくれます。巨匠のこういう業績が失われないように…願うばかりです。



 


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