右手のタッチについて。基本の基本からじっくりと。似たような内容でもこちらの考え方の微妙な変化で伝え方が変わったりするもんで、このあたりは毎回しぶとく出席してくれる人にしか分からないかもしれませんね。
演奏技術っていうのは、こまかーく分解していくと巨匠の技がわかってくるものです。
今日も教えていて、pp(ピアニッシモ)でも遠達性のある音が出せる感覚がわかりました。もちろんワークショップに出席した方にはその理由を説明しました。自分でやっていることをワークショップの現場で言語化した際に再確認できます。
毎回、こういうワークショップで技術のことやレッスンにおいても基礎技術を教える際に思うのは、「頭でわかっただけではダメ」ということ。頭でわかるのではなく、自分の身体でその動きができるようにならないとダメってことですね。
これは時間がかかる作業なんです。
今日も教えていて、ある動作ができるようになるまでじっくりと時間をかけて、その動作ができたら次のアクションを考えるということを言いました。基礎的な指の動きをマスターすることは簡単ではありません。
多分、僕はこの手の基礎技術を説明するのは慣れているほうですが、だからこそ受講した方は「頭で」わかったつもりになっちゃう危険性がある。なので、こういう講座をやるときは「とにかく、その動きができるようになるまでじっくりと時間をかけてくださいね!」と念押しすることにしています。
「ホセ・ルイス・ゴンサレス ギターテクニックノート」の講座も現代ギター連載とそれと連動しているYouTube動画、そしてスペインギターフェスタアカデミー(オンライン講座)の三つで行っていますが、そんなことを常に感じています。同じ練習でも初心者と上級者では見え方が違うのです。このテクニックノート講座ではそういう観点からヒントをひたすら出すようにしています。でも、それができるかどうかは、時間をかけてじっくりとやっていくしかありません。
そして、基礎技術をじっくりとやっていき、それを実際の楽曲でひたすら応用していくしかありません。例えばカルカッシの25のエチュードの「リョベート運指」。やたらにaが登場しており、めんどくせーってなるやつですね 苦笑。
でも、テクニックノートのアルペジオの運指をしっかりと見ていくと、合点がいくものなのです。
テクニックノートにはタレガからリョベート、プジョールへと継承され、その後アンドレス・セゴビアやセゴビアやレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサなどによって確立された伝統奏法のエッセンスが含まれています。
そのエッセンスを丁寧に見ていくと、「あ!だからリョベートの運指ってこうなのか!」と意味がわかってくるのです。それが実感できるのがカルカッシ25のエチュードです。そしてこのエチュードはリョベート編でやらないと全く無意味であることがわかります。このエチュードはリョベートの運指で行うと音楽表現的な意味が出てきます。音のグルーピングに意味があるわけです。
実はこの辺りに気づいたのは、僕自身も35歳くらいの時。ああ、勉強って時間がかかりますね!
興味ある方は是非、動画ご覧ください。
あと、最近気づいたこと。よく入門してきた生徒さんが「クラシックギターってどのくらいで弾けるようにありますか?」という質問をしてくることがあります。
僕がレッスンでよく使う教本は以下二つです。
「新ギター教本」(ギタルラ社)
「カルリ45のエチュード」(全音)
この二つのいずれかが終われば、クラシックギターは「弾けるようになった」と言えるのかなーと。この楽器の全体像もなんとなく掴めた段階なので、そう言っていいレベルなのかなと考えています。
で、たとえば「新ギター教本」ですが、練習なになにという感じで、番号が振られています。ざっくりと60程度の練習が含まれているのです。音階やアルペジオ、エチュードなど、あれこれあります。
当教室は年間36回のレッスンでやっています(月3回)。一つの練習を毎週こなして行ったとしても、2年弱かかります。
カルリ45のエチュードも45曲ありますから、同様に一曲ずつやっていっても、45週かかります。一週で仕上がらない曲もあるでしょうから、順調にいって2年かかる。
いずれの教本もスムーズに行ったらこのくらいかかるという目安です。
なので、「3年」。石の上にも三年!
何でも時間がかかるなー。