ギターレッスンと演奏の日記 from 富川ギター教室

クラシックギターの「伝道師」富川勝智のギター教室でのレッスン活動と演奏活動の記録です。

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19世紀ギターと仲良くなるために!

最近、YouTubeのショート動画とインスタの方に、19世紀のギター小品を少しずつアップしています。
youtubeのショート動画はこちら↓




使っているのは、19世紀フランス、ミルクール地方で作られたギターです。
ボディの中には “Coffe” の焼印。ラベルには1834年と1839年のパリ商工業博覧会での受賞歴についての記載あり。1857年頃の楽器。

ミルクールという町は、フランスの弦楽器製作でとても重要な場所です。ヴァイオリン製作の町として有名ですが、19世紀にはギターも作られていました。で、この楽器が面白い。

現代のクラシックギターとは、鳴り方がかなり違う。胴は小ぶりで、音の立ち上がりが速い。響きも軽やか。いわゆる「大きな音でドーン」と鳴る楽器ではありません。

むしろ、こちらが力で押し切ろうとすると、楽器がちょっと嫌がる。こちらがグッと押すと、音が詰まる。でも、指先が弦にスッと入ったときには、音がパッと立つ。


この反応が、とても面白いんです。


19世紀ギターは、アーティキュレーションにものすごく敏感です。音をただ並べるだけではなく、ひとつひとつの音に「子音」がある感じがします。


同じ音でも、右手の角度や力の抜き方、爪の当たり方が少し変わるだけで、発音の表情が変わります。だから、現代ギターよりも「滑舌」がはっきり出る。ごまかしがきかない。音色よりも滑舌。

そんな楽器のレスポンスを短い小品を弾きながら少しずつ探っているわけです。

なのでこのショート動画は、単なる「演奏動画」というよりも、僕にとってはこの楽器と仲良くなるための記録なのです。

19世紀のギター音楽には、短くて良い曲がたくさんあります。ソル、モリーノ、カルカッシ、コスト。

中には今ではあまり知られていない作曲家たちもいる。

その時代の空気や、ギターという楽器の性格がふっと見えてくるような小品がたくさんあるんです。

現代ギターで弾くと、ちょっと軽すぎるかな?と思うような曲でも、19世紀ギターで弾くと「あ、こういうことだったのか」と思うことがあったりね。

「語る感じ」が、19世紀ギターにはあります。

(まあ、もちろんね、19世紀ギターで弾かなくても、良い小品ばかりなので、みなさん弾いてみたらいいよー!)


そして実は、このシリーズにはもうひとつ目的があります。

9月に、19世紀の「フルートとギター」の音楽をテーマにしたコンサートを予定しています。そのための仕込みでもあるんです。

フルートとギターの音楽では、ギターは伴奏と思われがちですが、実はそれだけではありません。低音を作り、和音を作り、リズムを作り、音楽全体の空気を支える。

そのためには、まずこの19世紀ギターがどう鳴るのかを、こちらがちゃんと知っておく必要があります。

実際にフルートの音とどう混ざるかは、リハーサルをしてみないとわかりません。
ただ、その前にギター単体で、音の立ち上がり、響きの残り方、タッチへの反応を確かめておきたいのです。つまり、楽器の「ウォーミングアップ」。

19世紀ギターは、発音が速く、アーティキュレーションにとても敏感です。音を明確に出すのか、少し柔らかく置くのか、次の音へ自然につなげるのか。そのわずかな違いで、音楽の表情がかなり変わります。

輪郭を出しすぎると硬くなる。でも曖昧にしすぎると、音楽の言葉がぼやける。

そのちょうどよい滑舌感を、今はソロの小品を弾きながら探っているというわけ。

古い楽器を弾くというのは、ただ昔の音を再現することではないと思っています。その楽器が鳴らされていた時代と「歴史」に、こちらが耳と身体を合わせていくこと。


現代ギターでは少し説明的になってしまう表情が、この楽器だと自然に出てくることがあります。逆に、モダンのギターの感覚ではうまくいかないこともある。

9月のコンサートに向けて、まだまだ仕込みの段階です。でも、この仕込みの時間がかなり楽しい。

19世紀ギター音楽を、資料として眺めるのではなく、実際に鳴る音楽として感じていく。そして、その響きと滑舌感を、フルートとの室内楽につなげていこうと。


そんな感じで、しばらくこの19世紀ギターによる小品動画をアップしていこうと思っています。

動画はインスタの方にもあげてます。


佐藤弘和《風が運んだ4つの歌》譜読み動画、全曲アップしました

YouTubeで公開している「プロの譜読み First Take」シリーズ、佐藤弘和さんの《風が運んだ4つの歌》の譜読み動画が、ひとまず全曲分揃っております。

あくまでもファーストテイク。今はもっと深掘りしているところです。

今回取り上げたのは、佐藤弘和さんのギターデュオ作品《風が運んだ4つの歌》。

このシリーズでは、完成された演奏をお届けするというよりも、僕自身が楽譜を読みながら、音楽の形を探っていく過程をそのまま記録しちゃってます。

つまり、「演奏動画」というよりは、譜読みの現場を見てもらう動画です。楽譜を前にしたとき、まず何を見るのか…そのあたりを記録に残したかった。


ただし不思議なことに最初に譜面を読んだ時の直感は、弾き込んでいった後も残るものです。

今回の《風が運んだ4つの歌》は、曲ごとに譜読みのポイントがかなり違いました。

たとえば、デュオ作品ならではの難しさとして、自分のパートだけを見ていても和声の全体像が見えてこない場面があります。相手のパートと重なって、初めて響きの色がわかる。そのために僕の秘密兵器「ICレコーダー」も登場します。

また、第3曲「花の香にのせて」では、後半まで読んでいくことで、作品の中に何度も現れるモチーフや、よく使われる音程が見えてきました。最初は何気なく見えていた音の動きが、曲全体を見渡すと、実は作品の雰囲気を作る大切な要素だったりするものです。

第4曲「熱風の中で」では、リズムの捉え方が大きなテーマになりました。前半ではリズムをどう感じるか。後半では複合したリズムをどう整理するか。単に拍を数えるだけではなく、そのリズムがどんな推進力を生み出しているのかを探流。

佐藤弘和さんという作曲家の語法にも意識して、「ファーストテイク」しました。これはやはり最初に見た時の「直感」を大切にしないと見えてこない。でも、この直感は佐藤弘和さんの作品をたくさん弾いてみないとわからないものです。

この譜読み動画は、完成された模範演奏ではありません。

むしろ、迷ったり、確認したり、考え直したりしている部分も含めて見てもらう動画です。そして、僕の直感を探すのも面白いかもしれません。

クラシックギターを学んでいる方にとっては、「プロは譜読みのときに、こういうところを見ているのか」
「最初から完璧に弾くのではなく、こうやって音楽を探していくのか」という視点で見てもらえるとためになるかも。

譜読み(特にファーストテイクでは)とは音楽の手がかりを探す作業です。音を拾っていくことだけが大切じゃない。



今回のシリーズが、ギターを弾く方、佐藤弘和さんの作品に興味のある方、そして譜読みの考え方を深めたい方にとって、何かのヒントになるいいなあ。

なお、2026年7月15日(火)に開催する「富川勝智 Birthday Concert」では、この《風が運んだ4つの歌》を演奏予定です。

譜読みの段階で見えてきたものが、実際のステージでどのような音楽になっていくのか。

そのあたりも楽しみにしていただければと思います。

コンサート詳細はこちら
https://tomikawaguitar.sakura.ne.jp/wp/2026/06/01/%e5%af%8c%e5%b7%9d%e5%8b%9d%e6%99%ba-birthday-concert-%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%ae%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b/










ホセ・ルイス・ゴンサレス「ギターテクニックノート」講座、第33回の動画を公開しました

今回は第9章「和音の移動」を扱っています。

ギターを学んでいると、和音はどうしても「押さえ方」として覚えがちです。Cはこう、G7はこう、Amはこう。もちろん、最初はそれで構いません。ギターは形で覚えやすい楽器ですし、フォームとして記憶することには大きな利点があります。

ただし、ある段階からは、それだけでは足りなくなります。

今回のテーマである「和音の移動」は、単にコードフォームを別の場所にずらす練習ではありません。和音の中にある音がどのように変化し、それによって響きの性格がどう変わるのかを、左手の形と耳の両方で理解していくための練習です。

たとえば、同じような指の配置に見えても、ひとつの音が半音動くだけで、和音の性格は大きく変わります。

明るく安定していた響きが、少し緊張を帯びる。
透明だった響きに、影が差す。
開かれていた感じが、内側へ沈み込む。

こうした変化は、理論だけで説明してもなかなか身体には入りません。逆に、指の形だけで覚えてしまうと、今度は音の意味が抜け落ちてしまいます。

大切なのは、指の動きと響きの変化を結びつけることです。

この章の面白さは、そこにあります。

ホセ・ルイス・ゴンサレスのテクニックノートは、一見するととてもシンプルな練習に見えるものが多いです。ですが、丁寧に見ていくと、その背後にはかなり実践的な考え方があります。


指を動かす。
音を聴く。
響きの変化を感じる。
なぜその形になるのかを考える。


この順番を踏んでいくと、和音練習は単なるメカニックではなくなります。

特にクラシックギターでは、和音の押さえ方を「完成形」として覚えるだけではなく、そこへ至る過程が重要です。どの指を基準にするのか。どの音が共通して残るのか。どの音が変化しているのか。指を全部離して毎回作り直すのか、それとも残せる指を残して移動するのか。

こうした判断が、実際の演奏では音楽の流れに直結します。

和音が変わるたびに身体が止まってしまう人は多いです。
それは、指が遅いからとは限りません。


むしろ、次の和音を「別の形」としてしか認識していないことが原因の場合があります。今の和音と次の和音の間に、どんな共通点があり、どこだけが変化しているのか。その関係が見えてくると、左手の移動はかなり整理されます。

今回の動画では、そのあたりを丁寧に見ていきました。和音は、ただ押さえるものではありません。響きの構造を手で理解するものです。


そして、その理解は演奏の安定につながります。左手が無駄に動かなくなり、音の変化を耳で追えるようになり、結果として音楽の流れが自然になります。

ギターの技術というと、速く弾くことや難しい動きをこなすことに目が向きがちです。しかし、本当に大切なのは、こうした地味な部分です。

和音が変わる時に、何が起きているのか。
左手は何をしているのか。
耳は何を聴いているのか。
その変化が、音楽としてどう意味を持つのか。

ここを曖昧にしたまま先へ進むと、難しい曲になった時に必ず困ります。


逆に言えば、このような基礎的な章を丁寧に扱うことで、あとから出てくる複雑な和音進行やポジション移動にも対応しやすくなります。

「ギターテクニックノート」は、単なる指の訓練帳ではありません。

身体の使い方、音の聴き方、楽譜の読み方、そして音楽の組み立て方を結びつけるための教材です。今回の第9章「和音の移動」は、そのことがとてもよく表れている部分だと思います。

和音を暗記するところから、和音を理解して動かすところへ。

今回の動画が、そのきっかけになれば嬉しいです。




先生はどうやって譜読みしているんですか? 佐藤弘和《すすきの穂が揺れる》を初見で読んでみた

生徒さんから、こんな質問を受けました。

「先生はどうやって譜読みしているんですか?」

なんという興味深い質問!!


譜読みというと、まず音を間違えずに拾う作業、指使いを決める作業、最後に音楽的に仕上げていく作業、というふうに考えられがちです。


でも、実際にはそう単純ではありません。

音を読む段階から、すでに音楽は始まっています。
どの音が大切なのか。
どこに呼吸があるのか。
和音の響きはどちらへ向かっているのか。
フレーズはどこで緩み、どこで少し前へ進みたがっているのか。


そうしたことを考えながら楽譜を読んでいかないと、あとから「音楽的にする」という作業が、ただの後付けになってしまうことがあります。そして、実はそういうことがわかっていないと運指つけも失敗するもんです。

このことを考えると、スペインのバルセロナで学んでいた頃のことを思い出します。

師事していたアレックス・ガロベー先生は、よくこう言っていました。


「一番最初に楽譜を読んだ時から、音楽的な部分をきちんと攻めろ」


つまり、譜読みの最初から、音楽としてどう立ち上げるかを考えるということです。


今回の動画では、佐藤弘和さんの《すすきの穂が揺れる》を、ほぼ初めて楽譜に向き合うところから読んでいます。完成された演奏を聴いていただく動画ではなく、演奏者が楽譜を前にして、どのように音を拾い、フレーズを考え、指使いや響きの方向を探っていくのか。その過程を見ていただく内容です。

《すすきの穂が揺れる》は、タイトルの通り、風景が静かに浮かび上がってくるような作品です。派手な技巧で押し切る曲ではありません。音の間合い、響きの揺れ、余韻の扱い。そうした繊細な部分が音楽の表情を作っていきます。


そして実はこの曲、7月にメキシコから来日するギタリスト、ホアン・カルロス・ラグーナと一緒に演奏する予定になっています。7月15日、新大久保のスタジオ・ヴィルトゥオージでのコンサートです。

つまり今回の動画は、本番へ向けての練習動画でもあります。(どう仕上がるか気になる人は来てくださいね!)

もちろん、初めて読む段階ですから、止まったり、考えたり、迷ったりもします。でも、その迷い方そのものが大切なのです。どこで立ち止まるのか。なぜ弾き直すのか。何を確認しているのか。そこに、その人の譜読みの方法が出ます。


プロの演奏家が楽譜と向き合うとき、最初に何を見て、何を考え、どのように音楽を立ち上げていくのか。

生徒さんの素朴な質問から始まった今回の動画ですが、譜読みという作業の本質を考える、なかなか面白い記録になったと思います。



音の奥にある濃密な時間〜ラジオ公開収録覚書

もう4月になっちゃいそうですねー。
3月5日、駒沢 moment.base にてラジオ番組「クラシックギターと私」の公開収録を行いました。


季節はまだ冷たさを残していましたが、収録していた内容は少し先の春へ。

4月放送分(4/17・24)の2回分を収録。

今回のゲストはクラシックギタリストの坪川真理子さん。こういう場では「坪川さん」と呼んでいますが、昔からの感覚ではどうしても「つぼちゃん」という呼び方がしっくりきます。同じ時代や空気をどこかで共有してきた、そんな感覚があるのかもしれません。


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収録はいつも通り。あるポイントに触れた瞬間、ふっと深いところに入っていく時間があるものです。

印象的だったのは、音楽と日常のバランスについての話。
演奏活動、指導、そして家庭。それぞれをどう両立しているのかという問いに対して、無理に整えようとするのではなく、その時々の状況の中で音楽と関わり続けてきたこと。

その積み重ねが今の音にそのままつながっている、そんな話。

さらに話は音そのものへと進みます。トレモロの話題から、右手の独立、そして左手が音を作るという感覚へ。どちらか一方ではなく両方が関わりながら音が立ち上がっていくこと、そしてその先にある「どういう音を理想としているのか」という話へと広がっていきました。

スペインで実際に聴いた音、空間の中で感じた響き、ppでも存在感のある音のあり方。

言葉にするとシンプルですが、そこに至るまでの時間やそれぞれの経験がそのままにじみ出てくるような話でした。

個人的には、話している最中というよりも、むしろ話し終えたあとに残る感覚の方が印象に残っています。

「ああ、やっぱりそこに戻ってくるのね」と。どこかで納得している自分がいる。

同じ楽器を続けてきた者同士だからこそ、そして、同時期にクラシックギターを修行し、ほぼ同時期にプロ活動を始めた自分たちならではの言葉の手前で共有されている「何か」がある。

そんな時間でもありました。

その流れのまま、収録後はミニライブへ。
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演奏したのは佐藤弘和さんの「そよ風の中、自転車に乗って」と「2人の旅人」。

トークの内容と直接結びついているわけではないのに、どこかで確実につながっている。実際に音を出した瞬間に、言葉では掬いきれなかった部分が少しだけ輪郭を持つような感覚がありました。


その時の演奏を、今回YouTubeに記録として残しました。ラジオとして流れていくものと、その場で消えていく音楽。そのあいだにあるものを少しだけ掬い取ったような記録です。よろしければ、ぜひご覧ください。




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