2009年4月12日に永島志基さんによる「ビウェラ&19世紀ギターレクチャーコンサート」が当教室主催で開催されました。
当教室の「日曜ワークショップ」の講座です。
外部から講師を招いたのは今回で二人目です。一人目は藤井眞吾先生、そして、今回は永島志基先生です。(うーん、豪華なラインナップ!)
さて、永島志基さんの講座ですが…ひとことでいうと「実に軽やかでいて、深い!」という印象。
スペイン史の概観から始まり、そのおしゃべりに惹きこまれていくうちに、知らないうちにスペイン音楽史がしっかりと頭に入ってきました。
ホワイトボードにきっちりとスペイン史の登場人物を書き出して、そこに当時の音楽家達を絡めていく…。歴史というのは人で形作られてきたのだなあ…と楽しく学ぶことができます。
熱心にメモをとる参加者も多くいました。
もちろん、そこから当時の有名作曲家であったジョスカンなどの説明を挟み、実際にビウェラを使って、ナルバエスやミランなどの作品を演奏してくれました。
ビウェラはこんな楽器です。
山下暁彦氏による忠実なレプリカ。すっきりとした枯淡な味わい…でも、空間を満たすような響きの楽器です。
やはりクラシックギターでビウェラ音楽を弾く感触とは違います。当時の王室や教会などで、これらの楽器が奏でられていたことを想像すると、実に荘厳なイメージで満たされます。
後半は19世紀ギターによる解説。
19世紀ギターのおおまかな概説からスタートして、そこからアグアドを演奏。そして、その後はメインをソルの作品の解説とスタイル研究の講義です。
これはやはり永島志基さんの本領発揮です!
ソルの作曲スタイルの変化が実にわかりやすく理解できました。「村の幻想曲」は実は名曲だなあ、というのも実感。やはりソルは深いですね。そして、無限大の研究素材を我々ギタリストに与えてくれます。
永島氏はオリジナルのラコートを演奏。
私、富川も参考として自分が所有しているコゲット(ミルクールタイプ)のオリジナル19世紀ギターを持参。
このコゲットでも一曲、『聴講生の参考にため』と演奏してくださいました。
終演後は参加者が自由にビウェラや19世紀ギターを弾くコーナー(?)を設定してくださいました。
私、富川もちょろっと、演奏。立奏スタイルの解説をちょこっとしました。
私のコゲットは糸巻きが差し込みなので(シキさんのラコートは機械式)、そのあたりの違いも参加者には興味深かったようです。
(富川の感想)
とにかく楽しかったです!
一見、専門的なテーマにも関わらず、単純に音を聴くと「なるほど〜」とすとんと懐にはいってくる感覚がありますね。
ビウェラ=古楽=難しい…=どうせ楽しくないんでしょ?…と思ってしまったら、駄目なんですよね。
そして、我々が現在クラシックギターで弾いている多くのレパートリーが、エミリオ・プジョールなどの研究家肌のギタリストの研究発掘によって成立していることにもシキさんは言及しておりました。
このことは今の若手ギタリストにかけている部分だと思います。
シキさんも(私もどちらかといえばそうかな?)そのような「研究家肌」の演奏家です。もちろん、演奏力もしっかりとあります。
しかし、裏を返せば、そのように過去のもの(歴史)をしっかりと研究した上で、現在のギターレパートリーに還元する作業は「どの大ギタリストでもやっている作業」なのです。
…このことを多くの若手ギタリスト及び若いギタリスト志望の方は忘れがちであると思います。
「CDで聞いたことがある曲しか弾かない」
「誰それが弾いているから、弾いている」
…上記のような感覚では「プロ意識」は希薄だといえます。
今回のレクチャーに参加した若手プロギタリストやプロ志望の若者達は、(おそらく)プロの凄さを見たと思います。それを感じることができたら、今後は自分がそのような立場にならなくてはいけません。
さて、帰り際、シキさんと話をしました。
「まだまだ色々やりたいことあるんだよねえ!」と仰っていました。
それが「プロ」です。
私も、山のように、弾いてみたい曲がありますし、研究したいテーマもあります。
しかし、時間は有限です。
さて、一体どうするか…まあ、手近にあるテーマをとにかくやっていくしかありませんね。
さて、次回の「日曜ワークショップ」は私が講師です。
しつこーく「ギター奏法の基礎の見直し」の講義です。ギター奏法研究は私のライフワークです。音色の変化、しっかりとした音を出す基礎理論…これは何度喋っても、切り口次第でいくらでも展開できるテーマです。
5月10日午前9時30分〜。渋谷リフレッシュ氷川多目的室で行ないます。
多数の参加お待ちしております!
(詳細はこのブログのサイドバーにてご確認を!)