現代ギター誌にて久々に(一年ぶりかあ…)連載を再開します。
タイトルは「セゴビア・アーカイブ細見」です。
現在ベルベン社から出ている楽譜の解説…といえば簡単ですが、もうちょっと踏み込んだ内容となっていますので、是非お読みください。
1920年代、セゴビアのパリデヴューは衝撃的なものでした。その演奏にギターの可能性を感じた多くの作曲家がセゴビアのために曲を書いたのです。しかしその全てが演奏されたわけではありません。
そして今イタリアのギタリスト、アンジェロ・ジラルディーノの尽力によってセゴビアが所有していた手稿譜を収集・整理し、運指をつけて出版されているのです。
このシリーズには全て浄書された譜面(ジラルディーノの運指がふられた実用版)とオリジナルの手稿譜のコピー(!)が添付されています。また作曲家についての詳細なデータも貴重です。
さて、私の連載はこの楽譜を参考にしつつ、もうちょっと踏み込んだ内容となっています。第一回はフェデリコ・モンポウの「アルフォンソ10世の2つの頌歌による〜歌と踊り」です。モンポウという作曲家の音楽史上での位置づけを概観し、ギターとの関わりについて書きました。また作曲スタイルの変遷などにも触れました。
もちろん、この手の記事を書くに当たっては、モンポウのギター作品についても触れねばなりません。
この連載では、とりあげた作曲家に関して(またその周辺の作曲家に関して)最低限、クラシックギターを専門的にやる人(プロ志望の方など)であれば知っていなければならないレパートリーを同時に取り上げる方針で行く予定です。
ということで、今回は下記のギター作品及び関連作品をとりあげました。
- コンポステラ組曲
- 歌と踊り13番
- ラ・バルカ(小舟)(レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ編曲)
- 歌と踊り6番より「カンシオン」(ディアス編…他にも編曲あり)
- 歌と踊り10番(合唱版&ピアノオリジナル)
ある曲を弾くときにその作曲家について徹底的に調べる…という「癖付け」は実に大切です。その楽曲の歴史上の位置づけ、作曲家の人生のどのような時期に書かれたのか?…そういうことを調べること、感じること(想像すること)が正確な楽曲解釈へとつながっていきます。これはプロであれば必ず行っていることだと思いますし、もちろんアマチュアであってもこの作業はしてみると「知的作業」として楽しいと思います。
なので、上記の作品はモンポウという作曲家の作品を(ギターで)演奏する際は是非知っておいて貰いたいと思うので、取り上げたわけです。実際は文中に散りばめましたが、そこから読者が想像の幅を広げてみてほしいと思うわけです。
例えば1925年にはレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサがパリでのデヴュー演奏会でモンポウの編曲作品を取り上げています。これは非常に画期的なことだと個人的に思います。モンポウとレヒーノの間に親交があったということは資料上も明らかですし、モンポウというその当時としてはコンテンポラリーな作曲家の作品をレヒーノが演奏していたという事実…想像すると実に凄いことです。レヒーノの音楽家としての見識の高さ、意識の高さも感じることができます。
私自身、今回モンポウについて調べたとき、「これほどまでにギタリストとのつながりがあったのか!」と驚いてしまいました。今までのモンポウとギターとのつながりはやはり「コンポステラの講習会+セゴビア+モンポウ=コンポステラ組曲」という印象が強かったですから。いわば、固定観念ですね。
もっと若い頃からモンポウはリョベートやレヒーノなどの優れたギタリストとの親交があったという歴史上の事実があったことを忘れてはならないのです。
いろいろと書きましたが、是非現代ギター本誌、連載のほうをお読みください。
次回はレノックス・バークリーの予定です。(もう原稿提出済みです)