同じ曲を、何度も人前で弾く。
それは決して「慣れる」ということではありません。むしろ、弾くたびに違う顔を見せてくる。こちらの状態や、空間の空気によって、音の重さも、間の深さも変わっていきます。
アルバムを一度完成させ、レコ発ライブを終えたあとで、もう一度その曲たちと向き合う。
それは、少し時間と距離を置いたあとに、自分の書いた文章を読み返すような感覚でもありました。
1月最終の金曜日。1/29。
アルバム『ヨウジとわたし』のコンプリートライブ!アゲイン!を行いました。
会場は駒沢大学駅から徒歩1分の moment.base。
このアルバムが生まれた場所です。2ヶ月に一度、公開イベントとして久保田洋司さんと曲作りを続けてきた、まさに原点の空間。ここでイベントにいらしたお客様を前に、少しずつ曲が形になっていきました。
あらためて振り返ると、イベント前日に久保田洋司さんからメロディ譜と仮歌が送られてきて、当日はその旋律のイメージやインスピレーションの源を言葉にしながら掘り起こし、曲の完成イメージを共有する。そして次の回で完成形を確認する——そんな時間を2年ほど重ね、12曲が揃い、このアルバムになりました。
アルバムは2025年5月28日にリリースされ、東京と大阪でレコ発ライブを行いましたが、「この moment.base ではまだ演奏していないよね」という話になり、今回のアゲイン!ライブが実現しました。
初回のレコ発では、12曲すべてを初めて通して弾くということもあり、まだ全容がつかめていない感触がありました。基本的には久保田洋司さんとトークをしながら一曲ずつ演奏していくという趣向でもあり、現場で「弾き」、「イメージを確認していく」という感覚がありました。
でも今回は違います。ステージに立つのは僕ひとり。作曲者である久保田洋司さんは客席で、観客と一緒にこのアルバム全曲を聴く側に回る。
トークは入れず、1曲目から最後までノンストップで演奏しました。時間にすると30分ほどでしょうか。
弾いていて自分でもはっきり感じたのは、音が以前よりずっと“ほぐれて”いたこと。
一音一音を無理に掴みにいかなくても、自然に流れができていく。細部のニュアンスも、以前より余裕をもって扱えるようになっていて、12曲を通して「一つの作品」としての大きな流れを強く感じながら演奏できました。
全曲スルー演奏の後は、作曲者久保田洋司さんを交えてトークタイム。
このアルバムがどうやって生まれたのか、そしてこれからどう展開していきたいのか、久保田洋司さんとじっくり話しました。この日は会場も満席で、演奏もトークも、しっかり受け取ってもらえた感覚があります。
改めて今回弾いてみて思ったのは、曲順の強さです。
“水滴”の、形を変えながら繰り返される温かなモチーフ。
“君が眠っている間の世界”の、アルペジオの流れの中から自然に立ち上がる旋律。
3曲目で“ヨウジとわたし”が現れることで、作品全体の軸がはっきりと動き出す感じがあります。
“今日降る雪の”では迷いが安堵に変わり、“三杯目のコーヒー”では右手Pの連打を交えたかき鳴らしと、どこかアラブ的な響きが立ち上がる。
“花笑み”の親しみやすさ、“Quiri Nuque”の不安定さと5連符のスリル。
“熱”のリズム感と前向きなエネルギー。“わたしたちのYear-end Party”の、しっとりとした大人の余韻と遊び心。
“新瞬”の、音のない「間」。
そして“魚と数学”で一気にプログラム全体にクレッシェンドがかかり、“今までで一番”で静かに、でも確かな終着点を迎える。
この曲順は、実は完成した順番です。
タイトルのイメージだけでなく、制作の過程や僕たちの心境の変化が、そのままアルバムの流れになっている。今回通して弾いてみて、そのことをよりはっきり実感しました。
トークの中では、僕が「一人でステージに立って弾いていると、孤独を感じる」という話をしたのですが、久保田洋司さんは「孤独こそが創作の原点だ」と語ってくれました。軽い言葉のやりとりのようでいて、実はこのアルバムの核心を突く話だったと思います。
また、1曲目と2曲目は「しっかりした作品を作ろう」と少し力が入っていたこと、3曲目の“ヨウジとわたし”からは、好きな曲を自由に、力まず作れるようになったことも話しました。これは演奏していても、ライナーノートを読み返しても、納得できる流れです。
このアルバムを12曲の集合ではなく、一つの“組曲”として捉えたい。
今回の演奏で、僕自身もその感覚を強く持ちました。今後の展望としては、アルバム収録曲に久保田洋司さんが歌詞を付ける構想も、かなり現実味を帯びてきています。
弾き語り+独奏、インストと歌の組み合わせ、今のアレンジのままギターと歌で…。
形はいくつも考えられます。どんな言葉が選ばれるのか、どんなふうに音と絡むのか、僕自身とても楽しみにしています。特に“魚と数学”や“Quiri Nuque”は、想像するだけで刺激的。
いつも通り久保田洋司さんと話していると「あ、やはり、この人すごい感性だ」と思いながらも、終始自然体。
気づけばあっという間に時間が過ぎている。
曲作りの公開イベントには来られなかった方にも、「こんな二人のお話の中から音楽は生まれたんだな」と感じてもらえた夜だったのではないかと思います。
また季節が巡り、次の展開をお見せできる日を楽しみにしていてください。イベント期日は4/16に決定しております。「ヨウジとトミー」新展開!何か起こるのかお楽しみに!










