現代ギター11月号が発売中です。
このブログでも紹介しましたが、坪川真理子さんと松尾俊介君とで「GG学院ギター研究室」というのを担当しています。
こういう「お話形式」でやる記事というのは、実際は“その場”が一番面白いものです。なにが面白いかというと、“オフレコ”が面白いというわけです。
結構皆「毒」を吐いているというわけですね。
その「毒」を抜いた部分が、やはり紙面として載るわけです。
で、そのような観点からこの連載を読み返してみると・・・やはり毒が抜けていますね。でも、なんか今回は私が「リョベート、アルベニス、レイ・デ・ラ・トーレ・・・」と呪文のように繰り返しています。
しまいには、『本番前はセゴビアのポートレートに拝む!』とか言っていますし。
・・・なんだか、一時代前のギタリストみたいな感じです。
『リョベートの運指からはオーラを感じる』という発言もしていますが、これは半分本気です。昔はそれほど感じなかったものの、リョベート編の楽譜を見ると“気”がでています。最近、リョベートの運指の“奥深さ”がよく見えるようになってきました。
おそらく、「朱色の塔」や「スペイン舞曲5番」などはいろいろな版でやっている人がいるでしょうが、是非リョベートそのままの運指でやってみてください。カタルーニャ民謡なども一度そのままの運指で弾いてみると学ぶことがたくさんあります。
しばらくやってみて、その運指の“意味”がつかめたら、その本質を壊さないように弾き易いものに変えてみる・・・という手順が正しいのだと思います。
ここまでやっても、リョベートの“音楽”を100パーセント理解できるというわけではありません。録音を聴いてみると“?”という瞬間が多くあります。
しかし、運指をコピーしておくことで、『そういうノリはその運指に由来するのね!』とわかる部分もあります。そこからまた探りをいれていくのです。
こういう“?”な部分があるギタリスト(音楽家)の演奏が最近少ないと思います。
昔、留学から帰ってきたとき、友人から「お前の演奏にはブルーズがない!」といわれました。クラシックギターだから、そんなのあるはずないじゃん!と言い返しましたが、それはそれで真理だったのかもしれません。
この友人いわく、私がホセ・ルイス・ゴンサレスに就いていたときに一時帰国して開いたリサイタルの演奏には“ブルーズ”があったということでした。
ホセ・ルイス・ゴンサレス氏他界後、私はバルセロナでアレックス・ガロベーに習いました。もちろんアレックスは非常に理詰めで、音楽の構築法を伝授してくれました。テクニック的にも合理的なものを与えてくれました。
しかし、もしかしたら、バルセロナで私はクラシックギターの“ブルーズ”を『落としてきてしまった』のかもしれません。
結局、この友人がいった「(今の)お前の演奏にはブルーズがない!」という言葉が頭のどっかに常に引っかかっていたのだと思います。
抽象的ですが、この“ブルーズ”が、おそらくリョベートの音楽に在るのです。その正体を探るヒントのひとつが“運指”であると考えています。